未婚のまま独身を貫く「おひとりさま女性」。安定した高収入や自立といった、華やかなイメージで語られがちですが、彼女たちのライフプランにはいくつか注意点があるようで……。本記事ではMさんの事例とともに、おひとりさま女性に潜む落とし穴について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
年収1,600万円だった天涯孤独の50代独身女性、時代に抗い出世コースを爆走も…年収120万円へと落ちたワケ。ポツリとこぼした“冗談”に「ごめん、なにも笑えない」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

社長交代を機にライフプランに暗雲

しかし45歳になって、順調だった昇進街道に暗雲が立ち込めます。

 

新しく社長となった元専務が、Mさんを問題視するようになったのです。優等生タイプで苦労人の新社長は58歳。日ごろのMさんの言動がきつく、若い社員がメンタルを病み休職するケースが増えていることを問題にしました。Mさんは会議でも若いころと変わらず激しい口論を好んでいました。しかし新社長はそれを非常に嫌い、「同僚をリスペクトしていない」と厳しく指摘するように。

 

「大きな声を出し、相手の話を最後まで聞かずに自分の意見をごり押しすることがパワハラだという自覚はあるのか」とも。

 

「男性だから営業成績がよくて当たり前、というのはジェンダーハラスメントと呼ぶのだ」と、Mさんの男性社員に対する相変わらずの敵対心もハラスメントと捉えたようでした。

 

「なにと戦っているのかわからないが、大きな棍棒で他人を殴るのはやめなさい」そう言う新社長の言葉にカチンときましたが、Mさん自身も思い当たる部分もなくはありません。

 

新卒から23年が過ぎ、気が付けばMさんは「仕事ができる有能な女性管理職」ではなく、「パワハラ上司」「コンプライアンスをアップデートできない老害」でしかなくなっていたようです。

 

そして、決定的な問題が発生します。

 

決定的な人生の岐路

Mさんのハラスメントについてホットラインに相談した男性社員が、このままでは会社とMさん個人を訴え、裁判沙汰になりかねないという事件が起きたのです。Mさんが男性社員を同僚の目の前で大声を出して叱責し、「だからお前は女性にモテない」などと罵倒した様子が録音されていたため、会社は全面的に非を認めることに。

 

降格、配置転換となり地方支社に異動になったMさん。それでも年収は1,300万円を超えていたのですが、置かれた状況にプライドが許せなくなりました。「社長は女の私に嫉妬している」という強い怒りに囚われ続けたせいか、Mさんの体調は次第に悪化。母親がうつ病の末に亡くなったのと同じ45歳にして、自分も心療内科に通うことに複雑な気持ちになりました。

 

次第にMさんは会社を辞めることを考えるように。そして48歳となったときに退職。誰からも慰留されることはありませんでした。

 

同業で起業し、これまでの顧客を引き抜いて会社に仕返ししてやろうと考えたのですが……。起業は思いどおりにはいきません。引き抜こうとかつての取引先に連絡しましたが、冷たく断られることがほとんどです。若いころのように有力者の男性が自分を可愛がってくれて支援してくれるようなこともありません。プライドが邪魔をしてかつての同僚に相談することも無理です。

 

現在、Mさんは51歳。年収は120万円。当然ながら住宅ローンの返済を収入から行うことは不可能です。退職金と預貯金を取り崩して生活していますが、すでに預金残高は1,000万円を切っています。あと1年程度しか持たないことは明らか。不安にかられたMさんはFPに相談したのですが……。