長年の勤務に対して支払われる退職金。少しでも増やして老後の生活を盤石なものにしたいと運用を考える人も多いでしょう。しかし、くれぐれも慎重に行いましょう。失敗している人は決して少なくありません。本記事では、Kさんの事例とともに、シニア世代から始める投資の注意点についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
退職金2,000万円でほくほく、お高いワインを小脇にいそいそ帰宅の60歳会社員。幸せ間違いナシの老後のはずが…馴染みの銀行の勧めで疑いなく始めた〈シニア資産運用〉で大転落「震えが止まらない」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

大事な退職金が値下がり…

銀行からの封書には「購入した投資信託のことで、なにか不明点があればご相談ください」とありました。

 

Kさんが妻と一緒に投資信託の運用報告書を確認すると、最初は順調だった2つの投資信託の基準価格が徐々に下がっています。妻は慌てふためき「すぐに売却しましょう!」と言いましたが、Kさんは、「もうしばらく様子を見る」とそのまま保有し続けていました。しかし、震えながら下がり続ける様子を見届けることに我慢ならなくなり、その後すべて売却したそうです。Kさんは崖から突き落とされたような気持ちとなりました。

投資を始める際に気をつけたいこと

60代で「投資を始めよう」という人は少なくありません。インフレや増税などに負けないように、これまで蓄えた資産や退職金などのまとまったお金を上手く増やしたいという思いからでしょう。これまで投資を行ってこなかった人にとって、どのように始めたらよいか迷うことから、人の話を鵜呑みにして失敗する事例をよく目にします。

 

「わからない」といえないシニア

長年会社に勤務してきた60代の方は、「よくわからないが、わからないといったら嗤われるかもしれない」と心配し、素直に説明の不明点を質問できない人がいます。当然のことですが、説明を聞いてわからない部分があれば、「わからない」とはっきり伝えましょう。

 

また、一度に大きな金額をまとめて投資しないようにしましょう。金融商品は、価格の高いときも低いときもあるので、投資する資産を複数にするのと同様に、投資するタイミングも分散させると投資のリスクを抑えやすいです。

 

2024年1月からリニューアルされて注目を集めるNISA。通常、投資から得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座を開設して購入した金融商品によって得た利益は非課税になるという制度です。制度を活用して積み立て投資を行うと、投資する資金や時期を分散させることができます。

 

しかし一方で「みんなやっているから」という理由で大して調べずに始めると痛い目に遭う可能性もあるのです。投資は、預金と異なり元本の保証はありません。損失が出る可能性があることを心に留めておき、慎重に取り組むべきでしょう。