長年の勤務に対して支払われる退職金。少しでも増やして老後の生活を盤石なものにしたいと運用を考える人も多いでしょう。しかし、くれぐれも慎重に行いましょう。失敗している人は決して少なくありません。本記事では、Kさんの事例とともに、シニア世代から始める投資の注意点についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
退職金2,000万円でほくほく、お高いワインを小脇にいそいそ帰宅の60歳会社員。幸せ間違いナシの老後のはずが…馴染みの銀行の勧めで疑いなく始めた〈シニア資産運用〉で大転落「震えが止まらない」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

銀行で勧められた運用

銀行の「退職金運用セミナー」では、投資をする際には分散投資が重要だということや、その銀行で実施されている「退職金専用定期預金」「退職者専用プラン」の説明が行われました。セミナーの概要は以下のとおりです。

 

≫分散投資

投資を行う資産には、株式、債券、不動産、国内、海外など複数の種類がある。1つの資産だけに集中して投資するより、複数の資産に分散して投資した方が価格の変動を抑えやすく、安定した運用が期待できる。

 

≫退職金専用定期預金

・退職金の受取りから1年以内に預け入れ、1回だけ利用できる
・給与振込・年金受取の取引がある場合は、金利の上乗せがある
・他の金融機関で受け取った退職金でも、当行の口座に預け替えれば対象となる
・預入金額:200万円以上、退職金受取額を上限とする
・定期預金の金利:1.00%
・期間:3ヵ月

 

≫退職者専用プラン

・退職金の受取りから1年以内に預け入れ、1回だけ利用できる
・対象の運用商品と定期預金を同時に申し込むと、定期預金が特別金利で預け入れられる
・対象の運用商品:投資信託、ファンドラップ
・預入金額:200万円以上、退職金受取額を上限とする
・定期預金の金利:7.00%
・期間:3ヵ月

 

Kさんは、再雇用による毎月の収入はありましたが、事業部長として勤務していたときの1,300万円の年収と比べると、4割ほどになっていました。退職金のほかにも3,000万円の貯蓄がありましたが、これからの収入に少し不安もありました。

 

銀行員「私の母も買っています」

Kさんは、担当者が「これは、私の母も購入しているものなんです」と勧める、高配当の株式に投資する投資信託に魅力があると感じ、金利のより高い退職者専用プランに、退職金の全額2,000万円を預けることに決めました。

 

投資信託の運用成績は、3ヵ月間は順調でした。気をよくしたKさんは、3ヵ月が過ぎ定期預金の満期が来たときに、そのお金でもう1種類、少しリスクが高くリターンも大きく見込める投資信託を購入することにしました。それから半年ほどたったころ、銀行からまた封書が届きます。