定年後も働き続けることが多数派となっていますが、これまで勤めていた会社で働くか、それとも新天地を求めるかは人それぞれ。定年を機に起業し、長年の夢を実現する、というケースが増えています。しかし定年後の起業にはリスクも。みていきましょう。
〈月収43万円〉の定年サラリーマン〈退職金1,500万円〉を元金に、長年の夢だった「カフェ」をオープン!感無量もわずか8ヵ月で閉店、500万円の借金を負った「残念な理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職金をつぎ込んでカフェを開業した仲良し夫婦だったが…

長年の夢を叶える、シニアの起業。もちろん、そのすべてが上手くいくとは限りません。前出の男性のカフェもなかなか黒字にできず、8ヵ月で閉店を迎えてしまったといいます。負債は500万円ほど。返済のため、男性は古巣に頼み込んで再び働くことに。妻もパートで働き、家計を支えています。

 

――思っていた以上に飲食店は厳しかった

 

カフェを開店したのは表通りから1本入ったロケーション。「隠れ家カフェ」をイメージして決めた物件でしたが、ずっと隠れ家のまま閉店に至ったといいます。

 

――表通りは人通りが多かったので、1本入った裏道でもお客さんは来ると思っていた

――見よう見まねでSNSもやってみたんですが

 

カフェのオープンにあたり、学んだのはコーヒーのことは学びましたが、飲食店の経営については、さほど勉強しなかったという男性。物件選びや宣伝広報など、学ぶことは色々とあったと後悔しています。

 

――口コミで客は増えていくだろうと考えていましたが、甘かったですね

 

定年後の起業は、それまでの会社員人生で培ってきた経験や人脈を活かせることにあります。しかし男性の場合、まったく新たなチャレンジだったのでアドバンテージは一切ありませんでした。一方で、定年後の起業でデメリットといえるのが、年齢的にリカバリーが難しいこと。また男性の場合は、何とか古巣に戻ることができましたが、シニア起業で失敗に終わったとき、再就職のハードルが高いこともデメリットといえるでしょう。

 

定年後の起業する際は、開業資金と老後資金をしっかりとシミュレーションすることが重要。男性のように退職金をすべてつぎ込み、さらに借金までしてしまうと、最悪、路頭に迷うケースもあります。老後の生活のための最低限の資金は確保したうえで、夢に向かってチャレンジすることが鉄則です。

 

[参照]

総務省『令和4年就業構造基本調査』

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』