親元を離れて暮らす大学生。その多くが親から少なからず仕送りをもらい、生活をしています。恵まれた環境ではありますが、それでも生活していくのに大変なケースも。みていきましょう。
手取り月20万円…給与アップでも「ツライ。」都内1人暮らし男性の後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

大学卒業後、10月からスタートする奨学金返済に苦悶

入社2年目だという男性は、さらに昨年10月から始まった奨学金の返済が苦しいといいます。

 

――コロナ禍で仕送りも減っていたので。奨学金があって本当に助かった

 

大学生活を振り返り、奨学金に対して感謝の思いを口にするも、月々2万円の奨学金返済が始まってからは、その負担に思わず「奨学金を借りてまで大学に行くべきだったのか……」と後悔することもあるといいます。

 

労働者福祉中央協議会が行った『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』によると、「奨学金の借入金額」の中央値は285万6,000円で、平均値は324万3,000円。また借入金額が500万円以上にもなる人は12.4%もいました。さらに毎月の返済額の中央値は1万4,976.3円、平均値は1万6,880.2円。「返済期間」の中央値は15.5年、平均値は14.7年、最多は「15~20年未満」で33.5%でした。

 

返済の負担感については「余裕がある」が9.6%、「何とかなっている」45.9%。「苦しい」は「少し苦しい」23.8%、「かなり苦しい」20.8%合わせて、4割以上にもなります。

 

奨学金の返済が大学卒業後の生活設計にも影響を与えていることは、さまざまなところで指摘されていますが、同調査においても「結婚」は37.5%、「持ち家取得」が32.8%、「出産」31.1%。さらに「仕事や就職先の選択」が46.1%、「貯蓄」に関しては64.7%にも及んでいます。

 

このような思いまでして奨学金を利用すべきだったのか……奨学金利用に関して「満足している」が29.6%、「どちらかいえば満足」が45.1%と7割強を占める一方で、「不満」も25.3%と4人に1人の水準。自営業で42.0%、無職で37.4%にのぼりますが、正社員であっても24.4%と、奨学金利用をネガティブに捉えている人は多くいることが分かります。

 

――いまだに実家住まいだという同僚が、本当に恨めしい

――東京で生まれるかどうかで、すでに格差が生じている

 

愚痴は止まらないものの、大学に進学していなければ、職業の選択でも幅はなかっただろうし、今後の給与を考えてもアドバンテージは大きいと十分理解しているといいます。

 

結婚や出産など、ライフイベントにまで影響を与える奨学金の返済。日本の少子化にも少なからず影響があるといえるでしょう。この負のスパイラルを断ち切るためには、奨学金を利用しなくても大学進学を実現できるよう、これから親になる世代が早めに資産形成をスタートさせることしかないのかもしれません。

 

[参照]

一般財団法人労務行政研究所『2024年度 新入社員の初任給調査』

労働者福祉中央協議会『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』