眠れずに悶々とする時間で不眠が悪化

和田 「長寝」では「ベッドに横になっているだけでも休まる」と信じられていますが、それは間違いだそうですね。

鎌田 眠れずに悶々とする時間が長いほど不眠は悪化するそうなんですよ。眠ろうとする“あがき”が、さらなる不眠を招くのだそうです。年をとると必要な睡眠時間は短くなります。若いころよりもエネルギー消費量が少なくなって基礎代謝が落ちるため、短い睡眠で間に合うようになっていくんですね。

和田 実際に眠れる時間より長くベッドにいると、眠れない時間は増えていくだけ。「眠れない」と、かえって不満が増すこともありますね。

鎌田 そして「長すぎる昼寝」も問題。「1時間の昼寝は夜の3時間分の眠気を奪う」という言葉もあるそうです。短い仮眠は、その後の作業で眠気や疲れを感じにくくなるなどいい面もありますが、30分以上眠ると徐波睡眠(脳を休める最も深いノンレム睡眠)に入りやすく、そうなると夜の徐波睡眠が大幅に減ってメジャースリープ(夜のまとまった睡眠)の質が悪くなってしまうというのです。

和田 先ほど睡眠薬の話をしましたが、鎌田さんがほぼ薬をやめられた要因は?

鎌田 朝、必ず太陽に当たって外で軽い運動をするという習慣をつけたこと。昼寝をしたいときにはコーヒーを飲んで、20分以内に起きる。iPhoneで目覚ましをかけ、30分以上、寝ないようにしています。そこでさらに寝ちゃうと夜、今度は寝つきが悪くなるから。

和田 なるほど、長く寝ないことが肝心。

鎌田 いまは定年退職者ですから、僕は。だから昼寝をする場合でも20分。それから夜、お風呂に入って体を温めた後、軽いストレッチで血液の循環をよくしておくことを心掛けています。また、深部体温が下がっていくときに寝るようにしているので寝つきがよくなっていく。そのためにお風呂か、軽い運動をするか、カプサイシンを取ることで深部体温を上げる。夕食にカクテキやキムチみたいなちょっと辛いものを用意しておきます。

和田 よく考えておられますね。

鎌田 僕は朝食ではなく、よく夕食に納豆を食べるんです。ご飯が欲しいときはご飯を用意しますが、おかずだけでいいやという場合は、納豆にキムチを入れたりして食べる。そんなふうにしてちょっと体温を一回、上げて、下げるっていうことを心掛けたら、割合、よく眠れる習慣ができて、薬に頼らなくなることができました。