孤独は楽しむもの、孤立は避けるもの

鎌田 人生は〝長い老後〟をいかに生きていくかが重要ですが、そうなると老後を〝毅然〞として生きるための心構えが大事になります。でも〝毅然〞としていたいと思っても、友人や伴侶を失って、自分の「存在位置」を見失ってしまうケースもありますよね。僕は前に『ちょうどいい孤独』(かんき出版)で、「人間は孤独であってもいいけど、孤立してはいけない」と書きました。孤独は感覚的なもので、「独りぼっちだと感じる」「頼れる人が誰もいないと感じる」といった概念。つまり孤独感のことで、自分が積極的に行動すれば解消可能なもの。孤立は「社会的孤立」とも言いますが、望まないのに追い込まれてしまうもの。

和田 私も「孤独感に苛(さいな)まれて仕方がない」と相談を受ける例が増えています。孤独感は疎外感をもたらし、自分を孤立に導く。

鎌田 孤立しないで人とつながっていること、良好な人間関係が人を健康で長生きさせる力があるようですね。「孤立」が致命的なのは、孤独を感じることでストレスを生み、その結果、睡眠のパターンが乱れたり、ストレスホルモンが増加して慢性炎症が悪化し、免疫システムに異常を起こすなど、病気を誘発したり、命に関わる怪我をするリスクを高めるからです。血管系の病気、例えば心疾患や脳血管疾患を発症させるし、免疫力が下がって感染症にかかりやすくなるため、肺炎など呼吸器系の疾患にかかってしまう。その結果、糖尿病、がん、認知症、うつのリスクが高まり、それが自殺に結びつく可能性も高いというのです。

和田 孤独を楽しめる人がいるいっぽうで、人が寄ってこない、自分から人と接触しようとしない「孤立」は、先ほど述べた慢性炎症進行の大きな要因になっているようです。大きなストレスをもたらして血圧を上昇させ慢性炎症を引き起こすからです。社会との接触が乏しい人は、接触が多い人に比べて心臓病、糖尿病、認知症のリスクが約8倍も高いという、スウェーデンのカロリンスカ大学の調査もありますね。

鎌田 特に、支え合う相手がいること、結婚が健康に有益であることは、これまでも数々の研究で示されています。2017年に「Journal of American Heart Association」に発表された論文では、未婚の心疾患患者は既婚の心疾患患者に比べ、約4年後に心筋梗塞を起こして死亡する率が52%高いことが示されたというのです。