複雑怪奇な日本の年金制度。きちんと理解していないと、思わぬ損をすることもしばしば。そこなかでも理解が難しいのが、働きながら受け取る「在職老齢年金」。場合によっては「年金支給停止」という、なんとも悔しいことが起きることもあるようです。みていきましょう。
知りませんでした…「年金月25万円」の66歳男性、給与アップの喜びつかぬ間、年金機構から「年金支給停止」を告げるハガキが届いたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

66歳の大卒サラリーマン、賃上げの波にのり「給与アップ」で歓喜したが…

さらに給与についても深堀してみましょう。

 

ここでいう給与は「標準報酬月額(毎月の給与)」と「直近1年間の標準賞与額を12で割った額」を合わせたもの。毎月の給与には、基本給のほか、役職手当や通勤手当、住宅手当なども含まれますが、臨時に得た報酬は含まれません。

 

毎月の給与は年収を12で割った平均値なのか、といえばそうではなく、「4~6月の給与の平均値」。つまり4~6月に残業などして収入が多くなると、年金支給停止のリスクが高まるといえます。ちなみに支給停止額は月額「総報酬月額相当額+基本月額-50万円)×1/2」です。

 

たとえば、前出の大企業で働く平均的な大卒サラリーマン。65歳以降に受け取る月収(総報酬月額相当額)はどれくらいかといえば、36.9万円。1年目は年金支給停止は免れることができます。ただこの賃上げの波で給与アップ。66歳での月収は40万円になったとしましょう。そうすると、月1.45万円、1年で17.4万円の年金が支給停止になることに。賃上げ効果も残念な結果になってしまうわけです。

 

給与アップと聞かされ喜んでいたのも束の間、送られてきた支給額変更通知書で「知らなかった」と年金支給停止の事実に驚愕……。「なんとも理不尽な制度だ!」と憤慨するのも分かりますが、在職老齢年金は「厚生年金に加入」が前提。たとえば契約形態を変更してもらい、個人事業主として報酬を得るというのも手。厚生年金には加入しないので、収入額が同じであっても年金が減ることはありません。働き方を変えることで、年金支給停止を免れることができるのです。

 

[参考資料]

日本年金機構『令和6年4月分からの年金額をお知らせする「年金額改定通知書」、「年金振込通知書」の発送を行います。』

日本年金機構『在職中の年金(在職老齢年金制度)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』