がんになってからも治療費を稼ぐため通院しながら仕事を続ける人が増えています。がん治療に必要な高額な療養費は、ある種“がん治療の副作用”という見方もあるほどです。そこで今回、そんながん患者が頼りたい“救済制度”について紹介します。医師である勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
がんになっても仕事はやめないほうがいい?…高額な医療費を抱える「がん患者」のための救済制度【医師が解説】
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がんになっても仕事を続けるべき理由
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
編集者O(以下、O):がんの治療を続けながら働くことは困難と考える人が53.5%に上るという世論調査の結果が、2023年10月に内閣府から発表されました。がんの治療に専念するために仕事を辞める人も多いのでしょうか?
勝俣範之先生(以下、勝俣):たしかに、がんになると4割ぐらいの方は仕事を辞めています。なかには職場に理解がないために解雇された人もいますが、自ら退職するのはお勧めできませんね。通院で治療を続けながら仕事をしているという方は、確実に増えていますよ。
O:仕事か治療かの二者択一ではないということですね?
勝俣:はい。今は手術でも平均すると2週間程度で退院できます。抗がん剤治療も、通院でやろうと思えばやれます。ほとんどの場合、治療を続けながら仕事ができるし、一時的に休職しても職場復帰もできます。ですから、がんになったからといってすぐに仕事を辞めないでいただきたいのです。
そもそも治療に専念すると、ご自身のQOLを下げることにつながります。仕事が生きがいという人もいるでしょうから、簡単に仕事を辞めてしまってはその生きがいがなくなります。次項から紹介する公的制度なども上手に利用して、仕事と治療を両立させてほしいと思います。