がん治療にかかる高額な療養費は大きな負担ですが、日本にはその負担を軽くするための公的制度がいくつかあります。なかでも「高額療養費制度」は、所得によって自己負担限度額が変わってくるため、ぜひ確認しておきたいところ。勝俣範之医師の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、いざという時に利用したい制度について、詳しくみていきましょう。
月100万円のがん治療、自己負担3割なら30万円だが…70歳未満・年収500万円の人が「高額療養費制度」で取り戻せる“驚きの金額”【医師が解説】
治療費の負担を軽く…高額療養費支給の条件をチェック
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
編集者O(以下、O):治療費の負担を軽くできる公的な制度があるということでしたが、どんなものがあるのですか?
勝俣範之先生(以下、勝俣):まずは「高額療養費制度」です。これは比較的よく知られていて、だいたいどこの病院でがんの治療を受けても利用を勧められる制度です。海外ではこうしたものを聞いたことがありません。日本が誇る医療費の支払いに関するすばらしい制度の1つだと思います。
なお、ここでいう病院の窓口での支払額には入院時の食事代や差額ベッド代は含まれません。そのほかの支給条件については、[図表1]を参考にしてください。また、70歳以上と70歳未満の方では自己負担限度額も異なります。
O:仮に私が70歳未満だとして、年収が500万円、1か月の医療費が100万円、窓口での負担が3割だとするとどうなりますか?
勝俣:[図表1]に従って計算すると、自己負担限度額は8万7,430円です。窓口ではいったん30万円支払うことになりますが、差額の21万2,570円が高額療養費として戻ってきます。