申請しないともらえない「障害年金」請求するなら早めの準備を

【登場人物】

■教える人……勝俣範之先生

あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。

■教わる人……編集者O

身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。

勝俣範之先生(以下、勝俣):いまだに誤解が多いのですが、ぜひとも知っておいてもらって、利用していただきたいのが、「障害年金」です。障害年金は、老齢年金や遺族年金と並ぶ、公的な年金制度の1つで、条件を満たせば65歳未満の現役世代でも受給できます。

編集者O(以下、O):障害年金というと、身体障害者手帳を持っている人が対象ですか?

勝俣:いいえ、まったく違います。身体障害者手帳とは別の制度です。たしかに障害年金を受給するためには障害等級を定める必要がありますが、それは身体障害者手帳にある等級とは違います。

しかも、身体障害者手帳の取得に必要となる診断書は、指定された医師しか書くことができませんが、障害年金申請の診断書は、医師なら誰でも書くことができるのです。とはいえ、障害年金の制度自体をご存じない医師も多く、請求(申請)に必要な診断書を書いたことがないとおっしゃる医師もたくさんいます。

O:なんだか難しそうですね……。障害年金とはどのようなものか、もう少しわかりやすく教えてもらえますか。

勝俣:そもそも年金制度は、働いて収入を得ることが難しくなったときの所得補償です。だから高齢者だけのものではないのですよ。障害年金は病気などで働くことが難しいときの生活保障ですから、がん患者さんも、がんによる機能障害や、全身の衰弱、抗がん剤の副作用などで生活や仕事が制限される場合には年金を受給することができます。

たとえば副作用で手指がしびれてこれまでの仕事が続けられなくなった場合なども対象です。ただ、残念なことですが、がんの患者さんでこの障害年金を受給している方の割合は、ほかの病気に比べてとても低くなっています。

出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋
[図表1]障害年金5つのポイント
出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋