高額な治療費がひとつの副作用…忘れずに申請したい公的制度

O:がんになると、治療費などのお金のことも心配です。

勝俣:標準治療は保険でカバーされるとはいえ、最近のがん治療はお金がかかります。新しく登場してきた抗がん剤などは、私でもびっくりするくらい高額なものもあります。高額な治療費を副作用のひとつとしてとらえる見方もあるくらいです。

O:ますます心配になってきます。どうすればいいでしょうか?

勝俣:がんと診断されたらすぐに、公的に利用できる経済的な支援制度を調べておくことが大切です。主な公的制度をあげておきました。日本では全員が健康保険や介護保険に加入しています。

それぞれの所得によって決まっている支払い上限を超えたらお金が戻ってくる制度や、65歳未満でも受給できる年金もあります。制度を活用するのは患者さんの権利です。原則、申請しないともらえないものがとても多いので注意してください。

O:そうなのですか! 相談先はどういうところになりますか?

勝俣:まずはがん相談支援センターの相談窓口に聞いてください。相談は無料ですよ。

診断後からチェック!利用できる主な公的制度

●高額療養費制度

1か月間(1日~末日)に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた分の金額が払い戻される制度。自己負担限度額は、年齢や所得によって定められている。

相談・申請先など

加入している公的医療保険の窓口

●傷病手当金

会社員や公務員などが病気による休職などで収入が確保できなくなったときに、基準に応じた金額を受給できる。国民健康保険の被保険者は対象外(一部の国保組合では利用できる場合もある)。

相談・申請先など

加入している公的医療保険の窓口、勤務先の担当部署など

●障害年金

病気などで生活や仕事などが制限されるようになった場合、65歳未満でも年金が支給される。がんの患者でも、がんの進行や抗がん剤の副作用などで生活や仕事が制限される場合に、受給可能。

相談・請求(申請)先など

市区町村の国民年金担当課、年金事務所・担当共済組合事務局、年金相談センター、社会保険労務士など

●介護保険

40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)と、65歳以上の介護保険の被保険者(第1号被保険者)に分けられる。第1号被保険者は、介護が必要となった場合に誰でも介護保険のサービスを利用できる。
第2号被保険者は、末期がんで治療が難しくなり、生活で何らかの介護が必要になった場合に介護保険を申請できる。住民票のある市区町村に申請して要介護認定を受けるとサービスが利用できるようになるが、要介護状態の区分によって、サービス内容や月ごとの給付費の上限が決まっている。

勝俣 範之
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科
教授/部長/外来化学療法室室長