過剰な使用はかえって危険…抗がん剤をやめるタイミングとは

【登場人物】

■教える人……勝俣範之先生

あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。

■教わる人……編集者O

身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。

勝俣範之先生(以下、勝俣):抗がん剤について知っておいてほしいことは、使う状況によって目的が違うということです。進行がんや再発がんでは、できるだけがんの進行を抑え、症状を和らげるために使います。

編集者O(以下、O):つまり、進行がんでは、がんとより良く共存していくために抗がん剤治療を行うということですね。

出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋 出典:『がん患者白書2016』がん遺族200人の声 「人生の最終段階における緩和ケア」調査結果報告書より
[図表1]終末期に積極的治療を受けていた患者さんの割合 出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋
出典:『がん患者白書2016』がん遺族200人の声「人生の最終段階における緩和ケア」調査結果報告書より

勝俣:そうです。患者さんやご家族にも、過剰な抗がん剤の使用は避けたほうがいいことをご理解いただきたいですね。中には、抗がん剤を使えば奇跡が起こって、進行がんが治癒するのではないかと考える方もいらっしゃいます。だから、どんなにつらくても我慢して、最後の最後まで抗がん剤治療を続けたいとおっしゃる場合も多いのですが、それは決して適切ではないのです。

O:やめる基準のようなものはあるのですか?

勝俣:がん細胞は遺伝子変異を繰り返しますから、抗がん剤がだんだん効かなくなってくるのです。やりすぎはむしろ命を縮めることもあります。抗がん剤はいちばん治療効果が高いものから使い、それをファーストラインといいますが、セカンドライン、サードラインと抗がん剤を替え、今はフォースラインぐらいまでで限界です。ですから、ある時点で、抗がん剤はやめるべきです。個人によって違いはありますが、アメリカの臨床腫瘍学会がガイドラインとして出しているものが下の表です。

出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋 出典:米国臨床腫瘍学会(ASCO)の「やってはいけないリスト」より
[図表2]抗がん剤をやめる基準 出典:『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より抜粋
出典:米国臨床腫瘍学会(ASCO)の「やってはいけないリスト」より