がん治療の方法のひとつである抗がん剤。実は抗がん剤にもやめどきがあり、過剰な投与はかえって命を縮めることになってしまうそうです。では、「抗がん剤をやめるべきタイミング」とはいったいいつなのか、医師である勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
抗がん剤の“過剰な使用”はかえって危険…米臨床腫瘍学会が提示する「抗がん剤の使用をやめるべき」5つのタイミング【医師が解説】
過剰な使用はかえって危険…抗がん剤をやめるタイミングとは
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
勝俣範之先生(以下、勝俣):抗がん剤について知っておいてほしいことは、使う状況によって目的が違うということです。進行がんや再発がんでは、できるだけがんの進行を抑え、症状を和らげるために使います。
編集者O(以下、O):つまり、進行がんでは、がんとより良く共存していくために抗がん剤治療を行うということですね。
勝俣:そうです。患者さんやご家族にも、過剰な抗がん剤の使用は避けたほうがいいことをご理解いただきたいですね。中には、抗がん剤を使えば奇跡が起こって、進行がんが治癒するのではないかと考える方もいらっしゃいます。だから、どんなにつらくても我慢して、最後の最後まで抗がん剤治療を続けたいとおっしゃる場合も多いのですが、それは決して適切ではないのです。
O:やめる基準のようなものはあるのですか?
勝俣:がん細胞は遺伝子変異を繰り返しますから、抗がん剤がだんだん効かなくなってくるのです。やりすぎはむしろ命を縮めることもあります。抗がん剤はいちばん治療効果が高いものから使い、それをファーストラインといいますが、セカンドライン、サードラインと抗がん剤を替え、今はフォースラインぐらいまでで限界です。ですから、ある時点で、抗がん剤はやめるべきです。個人によって違いはありますが、アメリカの臨床腫瘍学会がガイドラインとして出しているものが下の表です。