がんの治療法とされているものは数えきれないほどありますが、もし自分や家族が「がん」と診断され、医師から治療法を提示された際、まずまっさきに確認しておかなければならない1つの事象があります。それはいったいなんなのか、医師である勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
「がんの治療法」を提示されたら…患者がまっさきに聞くべき“たった1つの質問”【医師が解説】
“スーパーアスリート級”のがん治療…治療費は?
O:そこまですばらしい治療法だと、治療費もかなり高額になるのではないですか?
勝俣:たしかに、がんの治療費は安くはありません。最新の抗がん剤などの中には、とても高額なものもあります。しかし、幸いなことに日本では標準治療に対して、健康保険が適用されることになっています。そのままではとても高額になってしまうがんの治療費も、標準治療として保険が適用されることで、患者さんの金銭的な負担が軽減されるようになっています。
これは世界に誇るべき日本のすばらしい医療制度の1つです。保険適用である標準治療こそが、最善・最良のがん治療です。ですから、がんの治療法を選ぶにあたっては、ぜひとも保険が適用される標準治療を選んでほしいと思います。
O:逆に言うと、保険がきかない、いわゆる自由診療や自費診療のようなものは、標準治療ではないということですか?
勝俣:その通りです。自由診療はエビデンスに乏しい、まだ治療効果が確認されていない「未承認治療」ということになります。一般的に医師から提供される自由診療や非医療者から提供される民間療法は、代替療法に分類されます。なお、代替療法の中には、鍼灸や漢方薬など一部に保険適用になっているものもありますが、これはがん治療として効能をもっているのではなく、対症療法になります。
O:それでは、保険が適用される治療は、すべて標準治療ですか?
勝俣:そこが難しいところなのですが、必ずしもそうではありません。標準治療は医療の進歩にともなって、その内容が変わっていきます。「彼は昔の彼ならず」ではありませんが、かつて標準治療だったものでも、現在では標準治療と見なされていないものもあります。それでも変わらずに保険適用として残っているものがあるのです。ですから、提示された治療法が最新の標準治療なのかどうかは、必ず医師に確認したほうがいいでしょう。
O:その標準治療なのですが、がんの治療を行っている病院なら、だいたいどこでも受けることができるのですか?
勝俣:まずは、がんの確定診断を受けた病院で標準治療を受けられるかどうかを確認することをお勧めします。残念ながらがんの診断や治療を行っているからといって、標準治療を主軸にしているとは限らないのです。
もし、そこで標準治療を受けるのが難しいということであれば、ほかの病院に転院することを考えていいでしょう。がんの標準治療は国が都道府県ごとに指定している「がん診療連携拠点病院」で受けることができます。もちろん、がん診療連携拠点病院に指定されていなくても、標準治療を行っている病院はあります。ご自身が治療を受けようとする病院で標準治療を受けられるかどうか、最初にしっかり確認していただければと思います。