医師が深刻な表情で「あなたの余命は〇〇です」と患者に告げるシーンを、テレビや映画で目にしたことがある人は多いでしょう。ただ、『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)の著者で医師の勝俣範之氏は、余命宣告について「即刻やめてほしい」と考えているそうです。患者を診断し、余命を告げる側の医師が「余命宣告はやめるべき」と考える理由はなんなのか、詳しくみていきましょう。
医師が告げる余命は当たらない?…“がんのスペシャリスト”が「余命宣告は即刻やめるべき」と考えるワケ
医学的根拠はない?余命宣告が当たる確率は“3割”
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
編集者O(以下、O):がんだと確定診断されたときに気になることの1つとして、いわゆる余命があると思います。
勝俣範之先生(以下、勝俣):医師が告げる余命は、当たらない確率のほうが断然高いんですよ。
O:えっ、そうなんですか。では、お医者さんから余命を宣告されても信じなくていいんですか?
勝俣:がん患者さんの余命に関する研究はたくさんありますが、余命には医学的根拠がないというエビデンスがあるのです。私自身もかつて勤務していたがんの専門病院で調査をしたことがありますが、余命が一致したのは33~36%でした。つまり、3割程度しか当たらないということです。
この程度の確率しかないのに余命宣告を行うことは大きな問題であって、できれば医師による余命宣告は即刻やめてほしいと、私は思っています。
O:そうなんですね。では5年生存率についてはどうですか?
勝俣:生存率は過去の数字からのデータですから、こちらもあくまで目安として受け止めていただきたいですね。自分が当てはまるかどうかは、1人ひとりのがんの状態にもよるのでわからないのですよ。