昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、一度入居すれば安心……というわけではありません。ときに退去を意識するような出来事も。看取り可の「サ高住」に入居した男性のケースをみていきます。
最期まで、ここで暮らせると思っていた…年金月18万円・78歳のおひとり様、「看取り可のサ高住」に入居も「まさかの大誤算」

自由で、介護・医療体制も完璧、終身利用も可…終の棲家として選んだ「サ高住」だったが

1年前に配偶者を亡くした78歳の男性の話。家事全般を妻にまかせていたこともあり、妻の死後、毎日の暮らしに悪戦苦闘。料理にしても、掃除。洗濯にしても、簡単なことが分からず、長女に電話しては呆れられることもしばしば。人間らしい生活ができない……と感じ、老人ホームへの入居を考えるようになったといいます。

 

ただ男性は、たまにお世話になることはあれど、基本的に病院いらずの健康体。自分から言い出したものの、老人ホームへの入居に、少なからず抵抗感があったといいます。

 

そこで候補に挙がったのがサ高住。比較的自宅からも近いサ高住は、

 

・日中は看護師が常駐し、クリニックも併設

・介護スタッフは24時間体制で常駐

・自立~要介護5まで対応

・終身利用可

・外出自由

 

と、自由でありながら、医療・介護体制もバッチリ。何よりも看取りも可と、最期まで安心といった点もバッチリ。費用は「入居時50万円、月額費用は22万円」と、年金月18万円(手取り15万円強)の男性は余裕をもって月々の10万~15万円ほどの貯蓄の取り崩しを想定。「15年は心配ないな」と懸念がないことを確認し、最終的に入居を決めたといいます。

 

ところが想定外の出来事が起きたのは、入居からしばらく経ってから。施設が閉鎖されるかもしれないという噂を耳にしたのです。

 

サ高住は税制優遇や補助金制度が利用できるなど国の政策として推し進めていることもあり急増中。その運営形態は、大きく「土地・施設運営一体型」「土地・施設運営分離型」の2種類。後者は、サービスを外部に委託するという方法です。ただ昨今、採算が合わなかったり、人手不足だったりして、運営から撤退、最悪、倒産というケースも。このような場合、自社運営に切り替えるか、新たな委託先を探す必要があります。施設の閉鎖は免れても、これまで通りのサービスが受けられるかは分からないのです。

 

――最期までここで暮らしていけると思っていたのに

 

サ高住に限らず、老人ホームを検討する際には、経営母体の状況についても調べるのが基本。また検討時点で安全でも、その後も確実というわけではありません。万が一に備えて転居費用も確保しておくなど、対策を講じておくと安心です。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior『高齢期の住み替え調査』