人気の制度として知られる新NISAとiDeCo。この2つを始めていることで、老後資金対策は万全だと思っていた佐々木さん夫婦(仮名)。世帯年収も1,000万円以上で一見何の問題もなさそうです。しかし、ライフプランを作成してみると……実際に足りないのはまさかの「教育資金などの現役時代のお金」でした。本記事では、佐々木さんの事例を紹介しながら、FPの金子舞氏がその解決策を提案します。
「えっ、足りないんですか?」新NISA+iDeCoで万全だった世帯年収1,000万円・40代公務員夫婦が直面した落とし穴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家計を見直すポイント4選

家計見直しの基本は、「①収入を増やす」「②支出を減らす」「③資産を増やす」です。①の「収入を増やす」は会社での給料アップなどが必要になるため、すぐに実現するのは難しいといえます。そのため、今回のケースでは、②の「支出を減らす」をしながら、③の「資産を増やす」ことが重要となります。今回佐々木さん夫婦には、以下の4点をご提案しました。

 

1. iDeCoの減額

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で準備する私的年金で、拠出時・運用時・受取時にそれぞれ税制優遇がある制度です。もちろん年収が多い家庭では、iDeCoによる節税メリットは大きいですが、一方で60歳以降まで引き出せないデメリットもあります。佐々木さん夫婦が受け取る退職金や再雇用で得られる収入も考慮し、直近10年はiDeCoを減額することで、老後ではなく今の資金に余力を残すことにしました。

 

減額する期間は直近10年を想定し、収入がアップした場合などには再度掛け金の額を調整することにしました。

 

2. 新NISAの増額

新NISA(少額投資非課税制度)は、今年から始まった投資運用利益分が非課税になる制度です。佐々木さん夫婦は、昨年までの旧NISA設定金額のまま新NISAをされていたため、今回iDeCoの減額分などを充てて増額することにしました。

 

NISAはiDeCoに比べて節税メリットは少ないですが、いつでも売却し現金化できるメリットがあります。そのため使うタイミングが10年以上先の資金は、今リスクを取って運用しつつ、万が一10年以内で資金が必要であれば売却・現金化するNISAでの運用をすることにしました。

 

3. 保険の見直し

佐々木さん夫婦は、新入社員時代職場に出入りしていた保険の方から勧められ、それぞれ個人年金保険をお持ちでしたが、契約内容や利率などを確認した上で、保険を解約することにしました。

 

保険は大きな固定費のため、見直すと効果が大きく表れます。その他の保険にもたくさん加入されていた上に、老後対策として加入されていたとのことで、万が一の死亡保障や老後対策はiDeCo+新NISAで補うことにしました。

 

4. 固定費の削減

支出の内訳を見てみると通信費が高かったため、格安SIMへ変更することにしました。通信費は、他社と比較したり手続きが面倒でされない方も多いですが、一度見直すだけで大きな固定費削減となります。佐々木さん夫婦も高いとは思っていたが、共働きで忙しく見直しを先延ばしにされていたとのことで、今回アドバイスさせていただき、大きな支出削減となりました。

 

このように支出削減しながら、不足する期間に対して資産を準備していくことで、佐々木さんご夫婦は現役時代の資金不足を補うことができました。

まずは自分の状況をライフプランでチェック

今回の佐々木さん夫婦のように、新NISA+iDeCoを始めて安心している方も多いと思います。しかし、家計状況や人生のライフイベントによって、いつお金が足らなくなるのか、どの制度が適切かは変わってきます。まずはご家族の人生のライフイベントを確認した上で、お金が出ていく期間を把握するところから始めてみましょう。

 

そして安心してライフイベントを乗り越えられるよう、ライフプラン(お金の人生プラン)を作ることをおすすめします。ぜひ支出を無理なく削減しながら、資産を増やす方法をライフプランでチェックしてみましょう。

 

 

金子 舞

ファイナンシャルプランナー