世界でも有数の長寿国である日本ですが、最期の最期まで健康に過ごせるかどうかは別問題です。「まだまだ元気」と思っていても、ある日突然、病が降りかかってくることも……。本記事では、Aさんの事例とともに日本の高齢者に立ちはだかる壁について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
年金月22万円、いつも笑顔の絶えなかった70代成功者の父「いい人生だった…」と終われないワケ。40代一人娘の涙【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

仕事が生きがいだったが…病に伏せ、引退へ

一代で法人設立まで築き70歳まで現役で従業員とともに現場もこなしていました。Aさん夫婦には当時42歳の一人娘がいます。娘の嫁ぎ先も会社を経営しているため、Aさん夫婦の会社の後を継ぐ人はいませんでした。

 

仕事とお酒以外に趣味もなく、この2つが生きがいだと周囲に話していたAさん。年金は月に約22万円、妻の年金を合わせると月約40万円を受け取ることができ、老後も余裕で暮らすことができます。会社が軌道に乗ってからは高い収入を得て、老後までお金に困ることはないのですから、Aさん夫婦は勝ち組といえるかもしれません。

 

Aさんは体力に自信があり、これまで大病や大きなケガをすることもなく、生涯現役だと笑って仕事をしていました。

 

71歳のある日、下腹部に痛みと吐き気が。「前日、飲み過ぎたかな」と冗談交じりに話していました。70歳を超えたのだから、1回ぐらい検査してほしいと家族にすすめられ、初めて人間ドックを受けることに。検査の結果、医者から衝撃の説明が……。

 

大腸がん、脳梗塞、腎不全…病気だらけ、手術を繰り返す日々に一変

「大腸がん、腹部大動脈瘤あり、腎不全、脳梗塞、血管ももろくなっています。すぐに手術が必要です」検査の結果を聞いて驚きが隠せません。いままで「あれ? なんだか身体がおかしいな」と思うことはたびたびありましたが、持ち前の体力でカバーできていただけだったことがわかります。



医者から説明を受け、まずは大腸がんの手術をしました。腹部大動脈瘤は定期的に検査しましたが、手術が必要な大きさになってしまったため、手術します。立て続けに手術したことで、腎不全が悪化、人工透析をすることになりました。

 

脳梗塞は手術できず、血液をサラサラにする薬を飲み続けることに。さらに心臓も弱っているとのことです。

 

さすがに仕事ができる状態ではなくなり、75歳のときに後継者が見つからないまま廃業することになりました。現在は要介護3の認定を受け、人工透析をするだけの生活になりました。

 

突然の病発覚から、手術をするたびに体重が減り、現役時代は80kgあった体重もいまは53kg。入退院を繰り返し、体力が自慢だったAさんはトイレに歩くまでは回復したものの自力で自由に歩くことはできずに、常に介護が必要な状態です。

 

たった10年足らずで、変わり果ててしまったAさん。「なんでこんなことに……。生涯現役を目標に仕事を続けたかった」と時折、娘に苦しい胸中を吐露します。