契約更新のお知らせをきっかけに、がん保険の見直しを考える人は少なくないでしょう。しかしがん保険には、一般的な生命保険契約とは異なる「特有のルール」があることをご存じでしょうか? 見直し前に正しく理解していなければ、後々公開することも……。本記事では鼻腔がんに罹患した池田由紀さん(仮名)の事例とともに、がん保険加入の注意点について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
やたら左の鼻だけつまる、花粉症かな…年収600万円の42歳会社員、小さな予兆からまさかの「副鼻腔がん」診断。“2ヵ月前”に加入も「がん保険無効」で呆然【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

軽視してはいけない「90日ルール」

一般的に生命保険の契約は診査が通れば、

 

1.申込日

2.告知日

3.第1回保険料の入金日

 

上記3つのうち最も遅い日付から保障が開始されます。ただし、がん保険の場合は「その日から90日間保障されない期間が設定される」ということが通常で、保険契約の重要事項説明の中で下記のような案内を受けます。

 

被保険者が責任開始期(責任開始期の基準日からその日を含めて90日を経過した日の翌日)の前日までにがん(上皮内がん等を含みます)と診断確定されていた場合には、保険契約者または被保険者がその事実を知っているといないとにかかわらず、ご契約は無効となり、給付金のお支払いや保険料払込の免除はできません。

 

ほかの保険にはないルールですが、その理由は保険契約者間での公正性の確保で、保険会社は以下のような事例を想定しています。

 

・たとえばがんは自覚症状がないなかで進行していて、がん保険加入後すぐにがん診断という可能性もあること
・乳がんなどはあらかじめしこりを自分で認識できて、病院へ行く前にがん保険に駆け込みで加入といったことも可能

 

症状が出て初めてみつかるがんもある

「がんはがん検診を受けてみつかるもの」というイメージがあるかもしれません。ただ今回の事例のように、全然関係なさそうなちょっとした症状での受診からみつかることもあります。自覚症状が出てがんがみつかる場合、すでにがんが進行していて、治療費の観点からがん保険の重要性はより大きくなる可能性があります。

 

最近は著名人がご自身のがんについて公表することも多くなっていますが、最近の事例では、タレントの見栄晴さんが2024年1月に下咽頭がんであることを公表されました。報道によると見栄晴さんは2023年中からのどの不調を訴えていたようで、症状が改善されないため年が明けて精密検査を受けたところがんの診断を受けたということです。

 

90日間は必ずがん保険契約の重複を

今回の事例の池田さんは老後のために貯蓄を頑張っていて、新規がん保険契約後「2つのがん保険の保険料を負担することがもったいない」という理由で古いがん保険をすぐに終了させてしまいました。

 

ただ自分でも40代になり乳がんのリスクについて気にしていたという点からすると、90日間の空白期間を作ってしまうことは不適切であったかもしれません。

 

「がん保険に限らず保険はもともと確率が低いもの。だけど起きたら経済的に困るから加入しておく」というものです。今回の事例のように小さな予兆から突然がんの診断を受けることもあり得ます。

 

そういった意味ではがん保険の見直し時には、古いもの新しいものを90日間は必ず重複させるべきであるといえます。