医療の発達などにより、平均寿命も伸びた現代では、しばしば健康寿命が話題に挙げられます。寝たきりにならずに健康的な老後を過ごすためには食事が肝心だと、医学者である家森幸男氏はいいます。家森氏の著書『80代現役医師夫婦の賢食術』(文藝春秋)より、健康な体を維持するために必要な栄養素について詳しくみていきましょう。
脳卒中や心筋梗塞のリスクを下げる効果も!…食の細い高齢者ほど摂取すべき、健康寿命を高める〈スーパー栄養素〉【80代の現役医師が助言】
魚と大豆がもたらす効果
たんぱく質が長寿の鍵を握ることは、私の長寿研究の原点となった、遺伝的に100%脳卒中を起こす「脳卒中ラット」を使った研究で証明されました。「脳卒中ラット」に1%の食塩水を与えると、100日以内に脳卒中を起こして全滅してしまいます。
それを予防するには、脳の血管を強化する材料となるたんぱく質を与えればいいのではないかと考え、「魚」や「大豆」を与えてみたところ、血圧の上がり方が緩やかになり、ラットの寿命も延びたのです。
また、東京都健康長寿医療センターの調査でも、たんぱく質を多く摂っている人ほど寿命が長い、というデータがあります。
たんぱく質摂取の指標となる「血清アルブミン」の値を高い方か4グループに分け、追跡調査をしたところ、一番高いグループ(男性は4.6g/dL以上、女性は4.7g/dL以上)は12年後にも8割の方が生存していましたが、一番低いグループ(男性は4.1g/dL以下、女性は4.2g/dL以下)は6割ほどしか生存していませんでした。
脳卒中ラットの研究で「魚」と「大豆」が寿命を延ばすことが分かったので、私はそれが人間にもあてはまるか、世界の長寿・短命地域を調査してきました。この結果、人間でも「魚」と「大豆」が、健康長寿の鍵となることが明らかになってきたのですが、まず「魚」の持つ素晴らしい健康効果に焦点を当てて、お話ししていきたいと思います。