増加傾向にある共働き夫婦。「妻はエリートで高給取り」というケースも少なくありません。このような場合、夫に万が一のことがあった際に受け取れる「遺族年金」に差が生じることも。みていきましょう。
〈月収50万円〉大企業勤務の48歳サラリーマン夫が急逝したが…「遺族年金ゼロの妻」と「遺族年金月16万円の妻」の決定的な違い

遺族年金の分かれ道…夫が亡くなった前年の収入が「850万円未満」or「850万円以上」

月16万円強の遺族年金。ただ受給要件は色々と複雑なので、一度、年金事務所にいき、自分の場合は遺族年金はもらえるのかどうか、相談してみるのが正解です。

 

そこで「残念ですが、あなたの場合、遺族年金はゼロです」と、職員も申し訳なさそうに事実を伝えてくる……色々な理由が考えられますが、ひとつの可能性として有力なのが、妻の収入。前出の通り、「①前年の収入が年額850万円未満であること」「②前年の所得が年額655.5万円未満であること」が、妻が遺族年金を手にするための前提条件。妻は亡くなった夫と同年代/大卒/正社員/賞与は平均水準だと仮定しましょう。この場合、月収55万円以上になると「生計維持関係」が認められない水準になります。

 

そのような女性、どれほどの割合でいるのかといえば、大卒・正社員女性の上位10%ほど。エリート妻と呼んでも差支えのない上位層。「そんなに年収が高ければ、遺族年金なんてもらわなくても生活していけるでしょ」というわけです。

 

また遺族年金を受け取るためには、「夫が亡くなったときに収入要件を満たしていること」が必須。仮に夫が亡くなった前年の年収は850万円以上で一度支給対象外になったら、その後、いくら給与が減って年収850万円未満になったとしても支給対象外。一方、夫が亡くなった時点では年収850万円未満で遺族年金支給。その後、昇給し、年収850万円以上になったとしても、年金停止にはなりません。

 

――えっ、あとで給与減になっても遺族年金がもらえないなんて

――よかった、あのとき、給与がまだ低くて

 

「48歳の夫を亡くした妻」という境遇は一緒でも、夫を亡くした前年の年収によって、遺族年金のアリ/ナシが決まります。一度下された決定は、その後、給与の増減があったとしても関係なし。エリート妻には少々納得のいかない結果ですが、制度である以上、仕方がありません。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』