ファイナンシャルアドバイザーである長谷川伸一氏によると、株を売買する際には利益のほかにも見るべきポイントがあるといいます。長谷川氏の著書『お金の動きに強くなる投資の入口』(総合法令出版)より詳しく見ていきましょう。
株価にばかり注目するのは危険…“勝てる投資家”が株の売買で重視している〈株価〉以外の「企業情報」とは?【投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカの投資家たちが、赤字続きのAmazon株を買い続けたワケ

お金を減らす人は、利益の伸びばかりに注目します。たしかに、利益は重要です。利益が出ていなければ、会社は潰れてしまうからです。

 

ここで理解しておかなければならないことは、利益は売上が変わらなくても、あるいは下がっていても出すことができるものです。大規模なリストラを断行するとか、コストカットの効果で一時的に利益を出すことができます。

 

しかし、売上はそうはいきません。商品が売れていなければ上昇しないのです。減収増益は投資家たちに嫌われます。売上が伸びているときは、店舗数を増やせば設備投資や人件費といったコストがかかります。そのため、一時的には利益が減少するかもしれません。

 

増収増益が理想的ですが、減益であったとしても、増収であれば買いと判断する投資家も出てきます。

 

Amazon は、インターネット販売の市場が絶対に伸びると見越して先行投資しました。しかし長い間赤字が続いていました。それでもアメリカの投資家たちはAmazon の株を買い続けました。なぜなら実際に売上が伸びていたからです。売上が伸びているならば、設備投資が落ち着けば赤字から黒字に転じます。そのとき、株価の上昇はさらに加速します。Amazon の黎明期に株を買っていた投資家たちは莫大な富を手に入れたわけです。

 

日本でもベイカレント・コンサルティングという会社があります。デジタル技術に強い日本最大級のコンサルタント会社ですが、2018年7月に発表した2019年2月期第1四半期の営業利益は28%減となりました。

 

減益の理由は人材の育成が将来の売上の源泉になることを期待して、人材採用を増やしたためのコストが上昇したからです。当時3,700円前後の株価は失望で売られ株価は3カ月で半値近い1900円台まで下落しました。

 

しかしその後、株価は上昇し、それから3年後の上場来高値では当時の32倍にもなったのです。

 

減益という結果は製造業でいえば今後の拡大する市場を見据え、生産設備の増強で減価償却が発生したようなものです。この人員増強が結果的に売上の増加と利益、株価の上昇を生んだのです。

 

減益で失望するだけでなく、その背景をしっかり見ることで逆にチャンスが見えてくることがあります。

 

中長期的に考えると、そのコストは売上の増加で回収できたわけです。お金を増やす人は、このような株を買っておくのです。

 

つまり、お金を増やす人は、会社の利益だけではなく、売上の伸びも必ずチェックしています。