家族との思い出がたくさん詰まった自宅。年を重ねていくにつ入れて、「最期までここで」という思いは強くなるようです。しかし様々な人が暮らすマンションの場合は、そんな思いが叶わないことも。みていきましょう。
年金月13万円〈72歳のおひとり様〉家族との思い出が詰まった〈築45年のマンション〉雨漏りも修繕できず「ツラくて、涙が止まりません」

築45年のマンションに「1人暮らしの72歳女性」…雨漏りも修繕計画進まず

マンションの大規模修繕は、資産価値を保つためにも、また快適に住み続けるためにも、絶対的に必要なもの。しかし、昨今の資材や人件費の高騰により、修繕費が高騰。積立金では修繕費を賄うことができないという事態に陥るマンションが増加しています。また空き家が増え続けるなか、そもそも積立金が十分でなく、修繕ができない→腐朽・破損が進む……という事例も。

 

今から45年ほど前、30年ローンで購入したマンションにいまなお住み続ける72歳の女性も、修繕の見通しが立たず、八方塞がりという状況に陥っている住民のひとり。

 

――亡くなった夫と子供たちを育てた、思い出の場所。それがいまやボロボロ

――雨漏りがするところも。早く修繕を進めてほしんだけど、話がまとまらなくて

――こんなところで生きていくのもツラいし、こんなところで死ぬのかと思うと……涙が止まりません

 

悲痛な思いを吐露する女性。修繕計画を話し合うマンション理事会では、意見が対立。女性と同じくらいに入居した世帯も多いマンション。

 

――壊れているところも多いから、多少、持ち出しがあってもしっかりと直したい

――どうせ先は長くないのだから、このままでいい。余計なお金は払いたくない

 

意見が大きく2分され、いまなお結論が出ていないのだとか。年金月13万円程度だという女性にとっても、さらに修繕費を出すの正直痛い。しかし、ここを終の棲家と考えているので、現在、議題にあがっている修繕案には賛成だといいます。

 

そもそも積立金が不足するのは、積立金の徴収方法に原因があると指摘されています。徴収法は主に修繕計画に基づき毎月同じ額を徴収する「均等積立」と、段階的に金額を増やす「段階増額積立」があり、国土交通省は管理組合の決議がいらない前者を勧めています。しかし昨今のトレンドは後者。これは分譲時に安く売りだせるため。しかし修繕回数を重ねるごとに修繕費は膨らみ、結果的に修繕が滞る要因にもなっています。

 

そこで国土交通省は積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう、引き上げ幅に一定の制限をかけるガイドラインの作成を急いでいるといいます。ただ今現状、修繕が滞っているマンションについては、なかなか解決策が見つからない状況。

 

[参考資料]

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』

厚生労働省『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査』