昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、ひとつが「パートナーを失くした喪失感から」というもの。特に妻に先立たれた夫が入居を決断するケースは多いようです。しかし、せっかく決めた老人ホームでも退去に至ってしまうことも珍しくないとか。みていきましょう。
愚かでした…年金17万円・78歳男性「安っ!」と選んだ〈老人ホーム〉も「こんなはずじゃなかった…」と大後悔。見学では見抜けなかった落とし穴

せっかく決めた「老人ホーム」を退去し息子の家に身を寄せる78歳の男性

終の棲家としても人気が高まる「老人ホーム」。しかし、1度入居すればそれで安心というわけではありません。

 

株式会社Speee/「ケアスル 介護」が行った『介護施設の転居に関するアンケート調査』では、入居した施設が「1施設目」は61.6%。老人ホーム入居者の4割は転居経験者ということになります。

 

また転居経験者にその理由を尋ねたところ、トップは「特養などに入所するため、一時的な入居だった」33.3%。「介護スタッフ・施設職員への不満」「介護サービスの質が低い」「医療・看護体制が不十分」「介護度や病気が重くなり退去を命じられた」と続きます。初めから転居前提の入所、介護サービス・体制への不満、介護度の変化などが主な退去理由のようです。

 

――こんなはずではなかったのに

 

そんな期待外れにより、退去を決断するケースも珍しくありません。

 

「78歳になる父が老人ホームを退去。一時的に同居生活」と投稿した50代女性。退去した老人ホームに入所を決めた理由は、ズバリ、安かったから。

 

そもそも老人ホーム入居にかかる費用は、まず入居一時金。そもそも老人ホームの家賃は「入居一時金方式」と「月払い方式」があり、前者は一定期間分の家賃をまとめて前払いするもの、、後者は毎月定額の家賃を徴収されるもの。前者を採用するホームが多く、前払いの分、毎月かかる費用を抑えられるメリットがあります。しかしまとまったお金がないと、入居は叶わないことも多く、月払い方式を用意している施設もみられます。もちろん一時金の費用はかからない分、毎月の費用はその分高くなる傾向にあります。

 

また入居一時金は一般的に5〜15年程度の償却期間があり、償却期間が終わる前にホームを退去した場合は、未償却分の入居一時金を返還してもらうことができます。通常は初期償却分として、入居と同時に償却される分があり、この部分は基本的に返ってきません。

 

次にかかる費用月額利用料。その名の通り、入居後に毎月支払う利用料のこと。内訳はホームによって異なりますが、「家賃」「食費」「水道」「光熱費」「管理費」「介護費」といったところ。またホームによって日用品代やおむつ代など、日常生活費として個人で支払う費用がプラスされることも。何が費用に含まれるのか、何が含まれていないのか、確認する必要があります。