同居を提案するも拒否する父…半年ぶりに訪れた「実家」で目にした驚愕の光景
とある40代女性の71歳になる父親も、妻に先立たれた夫のひとり。前兆といえるようなことは特になかっただけに、女性はもちろん、父親も相当ショックだっただろうと振り返ります。父親は大企業で営業部長を務めたエリート。70歳まで現役で働き、やっと落ち着ける……といっていた矢先の出来事だったといいます。
家族が心配したのは、仕事一筋だった父親がひとり暮らしができるのか、ということ。同居を提案したものの「気を遣うのも、遣われるのも勘弁」と父親。「結婚する前はひとり暮らしをしていた」と、半世紀前のことを持ち出し、子どもたちとの同居を拒否したといいます。
そこで女性の頭によぎったのが「老人ホーム」。介護を必要としない人が入居対象となる「自立型有料老人ホーム」について調べたところ、入居一時金は数千万円という施設が多く、月額費用は10万~40万円程度。父親であれば、退職金で入居一時金を賄うことができ、月額費用も年金月25万円程度もらっている父親であれば、それほど心配する必要なさそう。ただ色々調べてみたものの「俺はひとりで大丈夫だから」と突っぱねる父親に、老人ホームを勧めることはできなかったといいます。
そんな状況が変わったのが、母の葬儀以来の帰省。電話で父親の様子を確認しているものの、顔を合わせるのは半年ぶりだったといいます。そこで女性がみたのは、衝撃的な光景でした。
家の中にはゴミ袋が散乱し、テーブルの上には食べかけのお弁当やらなにやらでいっぱいに。障子はビリビリに破れたままで、とても人が住んでいるとは思えない惨状。そして何ともいえないニオイが家の中に充満。その元凶を探ると、冷蔵庫に入っていた牛乳。すでに賞味期限を大きくオーバーしていました。
――どうして、こんなことに
それは父親の姿をみて明らか。どこか目は虚ろで、着ているものもボロボロ。現役時代の覇気はどこへやら、影も形もありません。
――どうせ、誰もこない家だから
父親がポツリ。家事能力がない以前に、やはり、母(妻)を亡くした喪失感は大きかったのでしょう。父の激変ぶりに「やはりひとりにすべきではなかった」と後悔する女性。実家の大掃除のあと、「同居が嫌なら、老人ホームに入ろう」と説得しているといいます。
内閣府『令和5年版高齢社会白』によると、「65歳以上の住居形態」で最も多いのが「持ち家・一戸建て」で75.6%。「持ち家・分譲マンション等」11.8%、「賃貸住宅(マンション等)」8.4%、「賃貸住宅(戸建て)」2.0%と続き、老人ホーム含む「高齢者向け住宅・施設」は1.1%。65歳以上人口は3,500万人ほどといわれているので、全国で40万人近い高齢者が老人ホーム等で暮らしていることになります。
高齢夫婦において、パートナーに先立てられたことをきっかけに孤立を深めてしまうことは珍しいことではありません。社会のつながりをもつためにも、老人ホームへの入居も一手といえるでしょう。
[参考資料]