年を重ねれば、介護のリスクが高まります。そしていざ、介護が必要になったとき、自宅での生活が不便に感じることも。そこで選択肢になるのが「老人ホーム」です。しかし、介護サービスが充実しているホームであれば、この先も安心……と100%いえるわけではないようです。みていきましょう。
年金15万円「老人ホーム入居」の75歳母、安心の老後を送っているはずが真夜中に「SOSの電話」…ひとり娘が耳を疑った〈ホームの惨状〉

ニーズ拡大も「人手不足」「経営難」に直面する「老人ホーム」が増加

内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、要介護(要支援)認定者数の増加に伴い、介護に従事する職員数は増加。2021年、介護従事者は214.9万人にもなります。また介護関係の職種の有効求人倍率を見ると、全職業の有効求人倍率に比べ高い水準が続き、2022年、全職業で1.16倍に対して、介護関係の職種は3.71倍。それだけ人手不足感が強い業界だといえます。

 

需要が高まり、人手不足が深刻化する一方で、経営難の介護施設も増加。たとえば特別養護老人ホームの経営者らで構成する全国老人福祉施設協議会が公表した『令和4年度特別養護老人ホームの収支状況等調査結果(速報)』によると、特養1,600施設のうち、赤字施設の割合(補助金除く)は、令和3年度で43.0%であったものが62.0%と大きく増加。大きな要因として挙げられているのが、昨今の急激な物価高騰でした。

 

特養といえば、入居まで半年、1年などといわれ、入居まで長い行列ができている印象。そのため経営難とは無縁だと思われがちですが、昨今、地方では空室が目立ち始めているといいます。高齢者の増加ペースが、地方を中心に落ち着き始めていることが原因。サービス継続に黄色信号がともっているとか。なかには経営破綻を迎えるケースも。

 

実際に老人ホームを選ぶときは、経営母体の安定性もチェックポイント。ただ経営環境は刻々と変わるものなので、どんなに見極めたところで、想定外の事態は起こるものです。実際に老人ホームが経営破綻を迎えた場合、ほかの運営会社に引継がれることが多いものの、引継がれない場合も。その場合は新たな入居先を見つけなければなりません。

 

また明らかに経営難という施設の場合、先にサービスの低下がみられるとか。そのような異変を察知したら、先に行動を起こすほうが安心かもしれません。

 

[参考資料]

内閣府『令和3年版高齢社会白書』『令和5年版高齢社会白書』

全国老人福祉施設協議会『令和4年度特別養護老人ホームの収支状況等調査結果(速報)』