日本人の国民病とも言われる「糖尿病」。予防するために重要なのは「脂肪を落とすこと」だと、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、糖尿病の予備軍である「境界型糖尿病」に加え、「脂肪肝」と診断された広人さん(仮名)の事例を通して、健康的に減量する方法について見ていきましょう。
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体重が停滞したら「食事量」で調整
「ほかに、広人さんのほうで気がついた体の変化はありますか?」
「運動をするようになったからか、就寝時間が少し早くなりました。これまで仕事で遅かったこともあるのですが、夜テレビを見たり、スマホでネットサーフィンをしたりとベッドに入るのは深夜になることが多かったんです。でも、最近、10時を過ぎると眠気に襲われます。妻が『妊娠中は眠いのよ……』と言って、僕以上に早めに寝てしまうせいもあるかもしれません。ただ、逆に朝の目覚めはいいので、朝早めに出勤して仕事を済ませ、帰宅時間を早めにしています」
「体は素直ですね。私も朝型人間で5時には目覚めます。でも理由は簡単。夜、寝る時間が子ども並みに早いですから」
「ただ、体重がなかなか落ちなくなってきていて。ここ数日は、数字にあまり変化がありません。逆に微増する日もあったりで……」
「糖質を減らすと、同時に体から水分も失われるので、最初の1~2ヵ月は体重の減少が急速に起こるのです。この時期が過ぎると、水分が戻ってきて体重が落ちにくくなります。
もう1つの理由としては、少ないエネルギー量に体が慣れてきた可能性もあります。人はガソリンが減ってくると、少ないエネルギーで生きることができるように、燃費がよくなるのです。この停滞期の対策が、筋肉量の増加です。体組成計の測定結果を見ると、広人さんは、筋肉量が増えて、脂肪量が減っていて体重の変化がないだけです。この調子でOKです。体重も、このまま続けていけば落ちていきます」
「わかりました。ただ、あと1ヵ月と思うと焦りもあって……」
「アドバイスをするなら、減量が停滞していると感じたら順番を変えてみてはいかがでしょう。食べる量を減らしているのに体重が減らないなら、体重が減る量までしか食べないようにしたり、体重が減るまで運動をしたりというように。ここまで、とてもがんばっています。自分の体を信じてあげてください」
体重が落ちなくても焦る必要はありません。飢餓下で生き延びるための正常な反応です。