日本人の国民病とも言われる「糖尿病」。予防するために重要なのは「脂肪を落とすこと」だと、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、糖尿病の予備軍である「境界型糖尿病」に加え、「脂肪肝」と診断された広人さん(仮名)の事例を通して、健康的に減量する方法について見ていきましょう。
「糖質制限」中は要注意!〈唐揚げ〉〈ドレッシング〉〈脂身〉を避けると、逆に太りやすくなる“意外なワケ”【肝臓外科医が助言】
糖質制限時の外食のメニュー選びのポイント
「こんにちは。だいぶ秋めいてきましたね。今日は、広人さんお1人ですね」
「はい。妻からは先生のご指導で献立を考えやすくなったとお礼を伝えて欲しいと言付かってきました」
「それはよかったです。食事の記録を見せてもらって、糖質は控えつつ、野菜とタンパク質をしっかり摂れるメニューを工夫されていることがよくわかります。これは、広人さんも頼りになっているのではありませんか?」
僕は、深くうなずいた。
「では、血液検査の結果から確認しましょうか。空腹時血糖96。ヘモグロビンA1c5.5、AST19、ALT45、γ-GTP32。血糖値もヘモグロビンA1cも基準値内になりましたよ。順調です。体重は……83kg。これも目標達成です。努力されましたね」
「やっとメニューの選び方がわかってきて……。付き合いで食事に行くときも、糖質が少なそうなメニューを選んでいます。居酒屋ってメニューが多いので、意外と困らないんですね。唐揚げとポテトフライ、焼きそばの誘惑に負けなければ……。ロース肉も脂身は残したり、サラダのドレッシングもかけないようにしたりして。新鮮な野菜とそうでない野菜の味の違いに気づけるようになってきました」
「体にいい食事を続けていると、食材の味がしっかりわかるようになるんです。すばらしい成長ですね。ただ、唐揚げやドレッシング、脂身を完全に避ける必要はありませんよ」
「え、だってカロリーが高いから太るかと思って……。父親が、カロリーの高さから、肉をあまり食べられないような話をしていたのですが」
「私からはカロリーを気にしてくださいとは伝えていなかったはずです。糖質を控える食事に切り替えながら、脂・油・肉まで減らしてしまうと筋肉量が低下してしまいます。それでは、かえって太りやすい体になってしまいます。さあ、原点回帰です。広人さんが減らすべきは糖質です。つまり、砂糖、白米、小麦です」
確かに先生からカロリーというワードが出てきたことはない。では、父親が言っていたことは間違っていたのか?
すると、先生が説明をしてくれた。
「糖尿病と脂肪肝の改善効果が認められている食事法には、『カロリー制限食』と『糖質制限食』があります。カロリー制限食は身長や1日の活動量から摂取カロリーが決められ、炭水化物、タンパク質、脂質の摂取バランスが厳格に決められています。
対して、糖質制限食は基本的にカロリーを気にすることなく、糖質量のみを控えます。個人差は考慮せずに、1食あたりで摂取できる糖質量が決められています。今、広人さんが取り組んでいる食事です。糖質を半分に減らすと、毎回計算しなくてもトータルの摂取カロリーが減少することが、多くの研究で示されているのです。
ご飯を減らせば、肉や魚を無制限に食べていいわけではありません。ただ、体重を見ながら糖質を減らして野菜を増やす。それでも体重が減らない場合は、肉や魚も減らすという方針のほうが、毎食カロリー計算をするより、続けやすいですよ」
「唐揚げは食べてよかったんですね!」
「ぜひ、野菜を先に食べた後にどうぞ。運動も始められたようなので、とり肉は貴重なタンパク源ですよ」
脂・油・肉を減らすと筋肉量が低下し、太りやすい体になります。