減量のカギは「タンパク質の摂り方」?

【登場人物】
・前田 広人(会社員)……20代から10kg以上太ってしまった30代の会社員。健康診断により「肝機能」と「糖代謝」で要精密検査となり、スマート外来へ。スポーツドリンクの大量摂取が一因となり、「境界型糖尿病」と「脂肪肝炎」との診断が下される。
 

・前田 美希(主婦)……広人の妻。妊娠5ヵ月。
 

・尾形 哲(医師)……肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」担当医。外来患者の8割以上を3ヵ月で5kg減、脂肪肝改善に導くメソッドを確立する。

つらかった……。お腹がすいた。たまには、スポーツドリンクも飲みたかった。最初の10日間は、そんなことばかりを考えていた。でも、妻のサポートと順調に減る体重に支えられた。そして、2週間を過ぎる頃には、主食の量にさみしさを感じにくくなった。

そして、体重が86kgを切ろうかという朝、3度目の診察日を迎えた。

未精製の食品が健康な体を作る

診察室に入るや、O先生は立ち上がって僕らを迎えてくれた。

「1ヵ月、よくがんばりました!食事内容を見せてもらいましたが、美希さんの食事のおかげで、広人さんは目標の4kg減を達成できましたよ。気づいたことや調理の工夫も書いてあり、本当によくやってくださったことが伝わりました。途中で、お茶碗のサイズを変えたんですか?」

「はい。大きいお茶碗にちょこっとご飯だとさみしい感じがしたので、お茶碗自体を小ぶりにしました。夫がこの意味に気づいたのは、3日後でしたけど……」

と、妻は笑った。先生も微笑んでいた。

「あとは、以前、野菜不足にならないように野菜ジュースを飲むこともあったのですが、それはやめて地元の朝採れ野菜を2~3日に一度購入して、サラダやスープにするようになりました。私の朝の散歩にちょうどいいのもあって……」

「夏野菜はおいしいし、厳しい残暑から体を冷やすにも都合がいいですね。市販のジュースに頼らないで、旬の野菜を取り入れるのはいいことです」

「子どものためにも、私が食べるものもこだわりたいと思ってきました」

今日の妻はすこぶる饒舌だ。

「ご家族全員で健康になれますね。では、一緒に血液検査の結果を確認しましょう。空腹時血糖113。ヘモグロビンA1c5.9、AST36、ALT102、γ-GTP40。血糖値も肝機能も数値が改善しています。広人さん、1ヵ月の食事改善で体調に変化を感じていますか?」

「はい。最初の1週間はお腹がすいてすいて……。でも何をどれくらい食べていいのか判断がつかなくて、妻任せでした。飲食店に入るのも怖くて、お弁当を作ってもらったり。僕は余計なものを口にしないことだけに集中する日々でした。とにかく『極意5ヵ条』を守れたか、毎日、妻とも確認しながらやっていきました。

2週目になって、やっとランチで定食屋に入ることができ、おそるおそる『ご飯を半分で』と店員さんに告げました。一度体験してしまえば、次からはスムーズになるもんですね。明らかに体重が減る傾向が続いたので、次第にこの食事法でやっていけると思えるようになってきました。体重計に乗らなくても、体が軽くなったことを実感できています。

ただ、見た目はあんまり変わらないなと思っているのと、やっぱりお腹がすいたなと思う時間帯はあります」

「そうですか。1つ気になったことがあるので教えてください。朝と間食で、たまにプロテインを摂っていますね」

「はい。糖質を減らす代わりにプロテインならいいかと思って……」

「その考えは間違っていませんが、なるべく加工された栄養素よりも、元の材料がわかる食材を摂ることをおすすめします。しかも、某プロテインスプーン3杯分より、サラダチキン1個に含まれるタンパク質量のほうが多いのです。余計な添加物を摂って、肝臓に負担をかける心配もないですしね」

「……そうなんですか!? 今後はそうします」

〈先生からの処方箋〉

食材を未精製に近い形で摂る習慣は健康な未来の「自分への投資」。