2024年から新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がスタートした。積立投資だけでなく、一括投資もできるなど投資方法が柔軟になった。はたして、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか、ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏が考察していきます。
新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか…なぜ米国株式型が強かったのか (写真はイメージです/PIXTA)

5―まとめ

このレポートでは、10年および20年という投資期間を設定し、過去のデータを用いて試算を行い、同じ元本での積立投資と一括投資の投資結果を比較した。結果として、積立投資と一括投資とのリターンや元本割れリスクの差はあまりないが、実質的な投資金額×投資期間が大きい一括投資の方が資産形成のスピードが速く、最終時価残高が大きくなる可能性が高いことが分かった。

 

また、リターンがあまり変わらない積立投資と一括投資の選択よりも、適切な投資対象の選択の方がよほど重要であることが分かった。投資期間が長くなるにつれ、積立投資でも一括投資でも価格変動リスクに見合うリターンを得られると考えられる。つまり、投資対象を短期的な価格変動リスクに注目して、リスクが低い投資対象を選択してしまうと、それに見合う低いリターンしか得られなくなる。このことは投資の本質でもあり、多くの人が理解すべきことであると思う。逆に価格変動リスクが高い投資対象を適切に選ぶと、長期的にそれに相応しい高いリターンを獲得できる可能性が高いということだ。

 

これまで説明してきたように、過去のデータでは投資期間が10年と20年の場合、投資方法は積立投資でも一括投資でも、最終時価残高の平均値・最大値は、大きい方から概ね米国株式型(ナスダック100・S&P500)、先進国株式型、全世界株式型、外国債券型、国内債券型の順となっている。10年とか20年以上の長期投資では、価格変動リスクが高くても、米国株式型、先進国株式型など、高いリターンが期待できる投資対象へ投資したほうが実際に大きい最終時価残高を獲得する可能性が高い。

 

米国企業は日常生活や仕事に欠かせない商品やサービスを提供しており、収益の成長源である技術革新や新商品を次々と生み出してきた。今後も、米国企業に代わる存在がそう簡単に現れることがないと思われるので、当面の間、米国企業は競争力が続くであろうと考えている。米国株式型(S&P500やナスダック100)は将来的にも長期的に高いリターンが期待できる投資対象と見ている。

 

なお、日本株式は2012年末以降に投資特性が大きく変わったので、今後の日本株式の投資判断では今回紹介した過去のデータによる試算結果のみで判断すべきではないという点は注意が必要である。

 

以上を踏まえて、投資期間が長くこれから資産形成を始めたい人や資金的に余裕のある人は、まず米国株式型(ナスダック100・S&P500)、先進国株式型など、高いリターンが期待できる市場インデックス型商品を検討すべきであると考える。

 

投資初心者は少額でも良いので、高いリターンが期待できる投資対象に無理のない範囲内で積立投資をコツコツと長期的に継続することが大切である。積極的にリスクを取ることで、資産形成が速く進むことになる。さらに、資産形成が順調に進み、資金的に余裕が出てきたら、あまりタイミングを気にせずに一括投資すれば、将来の資産形成や資金使途についての選択肢拡大につながると思う。

 

勿論、投資に自信がある人や資金的に余裕がある人は、資産形成のスピードがより速い一括投資をして、更なる資産残高の増加を目指せば良い。但し、銘柄分散は大切であるので、今回紹介したような市場インデックス型投資は問題ないが、個別株投資には十分な注意が必要である。

 

また、今後の長い投資期間中、株価が暴落し、元本が一時的に毀損するようなこともあると思うが、けっして慌てて売ることなく、気長に株価の回復を待つことが大切であると思う。 

 

いずれにせよ、投資期間は長い方が良いので、なるべく早めに時間を味方に付けることが重要である。実際に新NISAや確定拠出年金等の税制優遇制度を積極的に活用して、今すぐにでも投資をスタートしてみてはどうだろうか。