2024年から新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がスタートした。積立投資だけでなく、一括投資もできるなど投資方法が柔軟になった。はたして、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか、ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏が考察していきます。
新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか…なぜ米国株式型が強かったのか (写真はイメージです/PIXTA)

4―米国株式型が何故良いパフォーマンスだったのか

投資期間10年、20年の結果から見れば、米国株式型(S&P500、ナスダック100)の最終時価残高やリターンの平均値が先進国株式型や全世界株式型よりも大きく、最もパフォーマンスが良い。

 

【図表5】世界GDP・MSCI ACWI・MSCIコクサイの国別構成
【図表5】世界GDP・MSCI ACWI・MSCIコクサイの国別構成

 

米国株式型がなぜ最も良いパフォーマンスだったのか、結果論になるが、米国企業が結局一番元気だったからである。

 

投資商品の連動指数として幅広く活用されているMSCIシリーズを見てみよう【図表5】。MSCI社は簡単に言うと、株式指数では、業績が優良で時価総額が大きく、将来の業績が見込める銘柄を選んでいる。2023年の米国のGDPは国別で首位にあるが、世界のGDPに占める割合は25.8%で、4分の1程度に過ぎない。一方、全世界株式型の連動指数であるMSCI ACWIは先進国23か国と新興国24か国の株式で構成されているが、そのうち米国株式が63.82%を占めている。自由で競争が厳しい米国の環境で育った米国企業は、競争に打ち勝つことで世界的にビジネスを成功させており、より収益を挙げ、業績面や将来性、時価総額において、日本企業を含めて、他の先進国や新興国の企業を圧倒していると言える。ちなみに、先進国株式型の連動指数であるMSCIコクサイは日本を除く22か国の先進国株式が組み入れられており、米国株式が75.53%も占めており、残りのイギリスやフランスやカナダなどの先進国企業のウェイトは4分の1程度に過ぎない。

 

たとえば、米国の株式市場動向を広く反映しているS&P500の構成銘柄を詳しく見る(図表6)と、時価総額が最も高い企業には、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アルファベット(Googleの親会社)、アマゾン、メタ(旧Facebook)などが含まれている。

 

2024年3月末時点、トヨタは時価総額が62兆円で日本企業では最大だが、S&P500の構成銘柄で最大のマイクロソフトの時価総額は449 兆円もあり、米国企業の規模の大きさがよく分かる。

 

マイクロソフト社が提供するオペレーティングシステム(以下、OS)WindowsやOfficeアプリは多くの会社の日常業務に欠かせない存在である。アップルはiPhone、iPad、Mac、Apple Watch等を多くの人々に提供している。グーグルの親会社であるアルファベットは、Google検索、Googleマップ、YouTubeおよびスマートフォン向けのOSであるAndroidを提供している。また、アマゾンも総合ECサイトの大手として家電や玩具、衣料品、食料品に至るまで幅広いジャンルの商品をオンラインで販売しており、映像(アマゾンプライムビデオ)、音楽(アマゾンミュージック)等のエンターテインメントコンテンツを多くの人々に提供し、クラウドサービス(AWS)を多くの企業に提供している。これらの米国企業は多くの人々の暮らしや企業の事業活動で不可欠な役割を果たしている。

 

ちなみに、短期的な価格変動リスクが更に高いナスダック100にはITやバイオテクノロジーなどの最新技術を持つ企業と米国に上場している海外企業が含まれているが、時価総額トップ6位までの上位企業はS&P500と同じである。これらの企業は人々の生活に欠かせない商品やサービスを提供し、その価値が市場で認められていることになる。

 

時価総額上位各社は多くの人々や企業のコミュニケーションや活動等を支える各種インフラ、DX、人工知能、流通、自動運転等で欠かせない企業であり、今後も技術革新とイノベーションを通して持続的な成長が期待できる。さらに、世界の大学ランキングでも米国の大学が常に多数上位に入っている。米国では高等教育が充実しており、世界で最も多くの外国人留学生を受け入れている等、優秀な人材を育成する環境が整っている。米国企業も優秀人材を高給で採用し、そうした人材が活躍して、米国のイノベーションに更なる力を注いでいる。

 

【図表6】S&P500とナスダック100の時価総額上位20企業(2024年3月末時点)
【図表6】S&P500とナスダック100の時価総額上位20企業(2024年3月末時点)

 

以上のような理由から、当面の間は、米国企業に代わる存在がそう簡単に現れることはないと考えている。政治や経済状況からの影響はあると思われるが、米国企業の競争力が強いという状況が今後もしばらく持続するのではないかと見ている。