停滞する経済を活性化すべく、2016年から導入されたマイナス金利はいよいよ解除が決まった。一方で、コロナ禍やインフレを経て、国内消費は落ち込む一方。国民の生活実感は、決して向上していない。新年度を迎える日本経済はどうなるのか。経済アナリストの森永康平氏に話を伺った。

 

※本インタビューは2024年2月28日に行いました。

2024年の日本経済はどうなるのか?

――2024年度の日本経済について、何がポイントになると考えますか?

 

「中小企業の経営者や投資家の方々と話していると、共通しているのが『2023年はインフレと賃上げの年だった』ということです。2024年度についても『インフレは続くのか』、『2023年度と同水準、またはそれ以上の賃上げが達成されるのか』という点を気にしています。2024年度も、この2点の動きに注目が集まります」

 

(写真:森永康平氏)
(写真:森永康平氏)

 

――2023年度の賃金伸び率は、約30年ぶりの高水準に達しました。しかし「給料が上がって、生活が楽になった」という声はあまり聞こえてきません。

 

「賃金には『名目賃金』と『実質賃金』の2種類があります。名目賃金は賃金の額面をそのまま表したものになりますが、ここ数年は賃金上昇より物価上昇スピードのほうが早くなっています。そのため実質的な豊かさを感じられないのです。このような状態に陥ると消費者は節約を考えるようになります」

 

――内閣府は2023年度のGDPを「前年比で+5.7%」と発表しましたが、実質値は2四半期連続のマイナス成長に留まります。

 

「専門家は『コロナが明けたら消費は回復するだろう』と見ていましたが、そう単純なことではありませんでした。景気を押し下げているのは間違いなく低調な内需です。2024年第1四半期も成長率はかんばしくないでしょう」

 

――そんななか日本株は好調です。2024年の国内経済にとって好材料とはならないのでしょうか?

 

「日経平均は、約3,800社と言われる上場企業のなかでも、日本を代表する225社の株価から算出されています。しかし労働者の7割は中小企業に勤めています。大企業の株価が好調でも国民の全体の生活実感には繋がりません。表面上の改善傾向が見えたとしても、日本経済の実態が好転していないのは明らかです」

マイナス金利解除をどう解釈するか

――賃金の上昇は2024年も続くと見込まれています。その流れを受け、2016年から続くマイナス金利政策の転換がいわれています。

 

「日本銀行の公式サイトで公開されている『金融政策決定会議』の内容を見ていくと、直近の内容は大きく3つ。1つめは『物価安定の目標実現を見通せる現状ではないが、今後、賃金と物価の好循環を確認できたらマイナス金利継続の是非を検討する』というもの。2つめは『目標達成が現実味を帯びてきたので出口議論を活発化させる』というもの。そして3つめは『今春の賃金改定は高めの水準で着地する可能性が高い。経済・物価情勢は改善傾向にありマイナス金利解除の要件は満たされつつある』というものでした。ただ、マイナス金利が解除されても当面は『緩和的な環境』に変わりはないので、状況が急変するわけではありません」

為替から見る日本「2024年、円安はどうなるのか?」

――コロナ禍が明け、インバウンド需要は復調しています。円安が続き、外国人にとって日本は観光を楽しみやすい国になりました。この状況は当分変わらないのでしょうか?

 

「日米の金利差とドル円相場の動きは相関関係が強いです。金利差が開けば開くほど円安になる傾向にあります。現在の日本の金利は-0.1%程度、アメリカが5.5%程度とされています。今後日銀がマイナス金利を解除し金利を上げたとし、アメリカがローン返済の必要な住宅需要などを高めるため金利を下げた場合、円安に歯止めがかかる可能性は高いでしょう」

 

 

 

――「アメリカの利下げは5~6月」と考える経済アナリストは多いようですね。バイデン大統領も「保証はできないが金利はもっと下がるに違いない」と発言しています。

 

「ただ円高とはいっても、せいぜい120~140円台程度に戻る程度で、2010年代初めのように100円を割るようなことはないでしょう。また円高になれば、これまで株価を牽引してきた輸出企業には逆風になりますので、投資家は注意する必要があります」

 

――2024年度の日本経済を考える際、もうひとつの大国・中国の動きも気になるところです。

 

「中国経済においては、不動産業界で起きている異変に注目する必要があります。中国では2016年から5年以上、不動産バブルが再燃していましたが、習近平率いる中国共産党が規制を強めた結果、GDPの3%程度を占める大手ディベロッパーの破綻が噂されています。中国は成長率が鈍化しており若年層の失業問題も深刻です。こうした混乱は海外にも伝わり『アジア向けの資金を中国から日本へ』という動きに繋がります。グローバルに運用をする投資家の資金配分という観点も持つと、投資判断に役立つでしょう」

 

ここまで森永氏に、日本経済の現状からマイナス金利解除の影響、そして為替動向について伺った。それらを踏まえたうえで、日本の投資家はどのように活動していくべきなのだろうか。森永氏による「資産別投資戦略」は、ぜひ動画で確認してみてほしい。

 

 

※本連載は、J Sync株式会社が運営する『OWNERS.COM』(https://cf-owners.com/)のコラムを一部抜粋・転載したものです。