仕事から「完全引退の時期」で大きく変わる年金額
前出のサラリーマン。大学を卒業し、入社した会社で奮闘すること34年。定年は60歳で、その後、再雇用で65歳まで働く人も多いといいますが、「もう耐えられない」「会社にいるだけストレス」と心が折れて、定年を待たずに会社を辞める決意をしたといいます。
――とりあえず退職金ももらえるから、ゆっくりしたい
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大学・大学院卒の定年退職金の平均額は1,896万円。また大学・大学院卒の退職金を勤続年数別にみていくと、「勤続20~24年」で1,021万円、「勤続25~29年」で1,559万円、「勤続30~34年」で1,891万円、「勤続35年以上」で2,037万円。男性の場合、いま会社を辞めても、2,000万円弱の退職金を手にできる可能性があります。
さらに老後のお金についても考えてみましょう。
仮に入社以来、大企業勤務の大卒サラリーマンの平均給与を手にしてきた場合、65歳から手にできる老齢厚生年金は月11.5万円。併給の国民年金と合わせると、18.3万円です。
次に60歳の定年まで全うしたとしましょう。65歳で手にする老齢厚生年金は12.9万円。国民年金と合わせて19.7万円になります。
さらに再雇用で嘱託社員など、非正規社員として65歳まで働いたとしたら、65歳から受け取る老齢厚生年金は13.8万円。国民年金と合わせると20.6万円になります。
●モチベーションをなくし、60歳定年まで3年残して完全引退となったら、年金は月18.3万円
●なんとか60歳まで勤め上げて完全引退となったら、年金は月19.7万円と、月1.4万円の差
●さらに再雇用で65歳まで働き続けてから完全引退となったら、年金は月20.6万円と、月0.9万円の差
月2.3万円の差は、1年で27.6万円、10年で276万円、20年で552万円、30年で828万円の差。どのパターンがいいのか、評価が分かれそうな金額です。
ただ仮に定年を3年残し仕事を完全に辞めたら、年金支給までの8年間は無収入。貯蓄を取り崩して生きていくことになります。月の支出が30万円ほどだとしたら、年360万円。8年で2880万円の支出となります。
退職金をすべて使っても足りず、貯蓄を取り崩して生活していくことになります。それだけ貯蓄があれば問題ありませんが、退職金も使い切り、貯蓄にまで手を付ける……少々、老後が不安になります。
――モチベーションなんて青臭いこといわずに、せめて定年まで頑張ればよかったな
ポストオフになった際、モチベーションの低下は避けられるものではありません。しかし新たな視点で仕事を見つめることができ、毎日が挑戦、などと前向きな意見も目立ちます。老後を見据えた際も、早まった決断は避け、できるだけ長い間働けば、その分、年金額になって返ってきます。
[参考資料]