突然訪れる大切なパートナーとの別れ。残された遺族の生活を支えるのが「遺族年金」です。しかし、「共働きの妻」と「専業主婦の妻」のそれぞれの遺族年金額には、不平等ともいえる差があって……。本記事では、Aさんの事例とともに日本の公的年金の注意点について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
65歳からは年金月7万円、“遺族年金ゼロ”の衝撃…50代で夫を亡くした共働き妻「専業主婦を妬まずにはいられない」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

無年金対策として創設された第3号被保険者制度

第3号被保険者制度は、1986年4月から適用された制度です。この制度がスタートされる前は、専業主婦は任意で国民年金に加入し自ら保険料を負担するしくみでしたが、未加入のひとは老後に無年金になる問題が指摘されていたことから設立されたものです。

 

しかしながら、この制度ができて以降は、女性の社会進出が進み、現役世代が減っていることや婚姻率の低下等により、第3号被保険者は1995年度末の約1,200万人をピークに減少が続いており、2022年度末では、約763万人となっています。

 

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和3年度)※1
[図表2]国民年金(基礎年金)における、それぞれ被保険者の種類ごとの人数※2

 

女性の生き方もさまざまとなり、時代にそぐわず不公平ともいわれ、次のような見直しを求める声も大きくなっています。

 

・女性の就労は今後も続くことが予想され、女性の社会進出を阻害しかねない制度である。
・保険料も負担せずに給付を受け取るのは社会保険の原則に反するのではないか。
・一般的に生活が苦しいといわれるシングルマザーは保険料を負担していることから、配偶者のいる人の免除はおかしい。

パート勤めの2つの壁

パート勤めなど収入のある妻が扶養から外れないために、2つの壁があります。いずれも、社会保険料の負担が発生することで手取りが減ってしまうため、労働時間を抑制する人も少なくありません。

 

ひとつは、106万円(1ヵ月の賃金が8.8万円)の壁。厚生労働省のガイドブックでは、社会保険に加入することになる人を次のように解説しています。

 

厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」※3
[図表3]社会保険加入条件出所:厚生年金ガイドブック 従業員向け※1

 

2024年10月以降は、勤務先の従業員数の規模が101人以上から51人以上へ変更されます。現行で100人以下の企業に勤務していて扶養内となっている人は、2024年10月以降の制度変更で働き方を考える必要があります。

 

もうひとつが130万円の壁です。106万円の壁に該当しなかったひとでも、年収が130万円を超えると、扶養から外れ、社会保険料の負担が発生します。時給単価のアップや人手不足の問題から、扶養内に留まるための労働時間の抑制は大きな課題となっています。

 

岸田首相は「106万円・130万円の壁」について見直しを表明しており、今後の大きな制度改革の動向には注目です。

第3号被保険者制度は大きな見直しへ

令和6年度の社会保障費は、歳出全体の3分の1を占めており、前年度(36.9兆円)から約8,500億円増の37.7兆円です。今後も社会保障費は増え続けるため、大きな問題となっています。

 

また、第3号被保険者制度がスタートした1986年は男女雇用機会均等法も施行された年でもあり、ジェンダー不平等、との意見もあります。

 

第3号被保険者制度の見直しは2025年の年金改革の検討課題にあがっているため、今後は大きな制度変更があるかもしれません。

 

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表