わずか100円程の保険料で、最高2,000万円の治療費を払ってくれるがん保険の保障「先進医療特約」。お金を気にせずに最先端の治療を受けられるため、付加しているという人も多いでしょう。しかし、この特約には多くの人が知らない驚愕の事実があって……。本記事では、飯田幸恵さん(仮名/41歳)の事例とともに先進医療特約の注意点について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
年収500万円・41歳女性、“肺がん”罹患…治療後に「先進医療特約」の驚愕事実を知って大後悔【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

がん治療の選択肢にならなかった先進医療特約

3ヵ月ほど前、精密検査で飯田さんに肺がんが発覚。大きなショックを受けましたが、幸いがんは早期段階でいま治療を受ければ5年生存率も低くないことを知り、治療を受けて元気に復帰したいと思うように。

 

治療方針を決めるまでのあいだに自分のがん保険の内容を確認し、2年前に保険ショップで相談したときの先進医療の話を思い出しました。

 

主治医は先進医療を勧めてくれない

そして次の診察時、主治医から治療について手術の提案を受けたのですがその際に「先進医療はどうですか?」と聞いてみた飯田さん。ところが主治医からは「飯田さんのがんでは手術が標準治療、先進医療は科学的根拠に乏しく勧められない」というあっさりとした回答で改めて手術を勧められました。

 

モヤモヤ感が消えなかったのですが、がんに対する詳しい知識もなく、これまで診てきてくれた医師の言うことであること、早く治療を受けてがんの不安を消したいことから、主治医の提案を受け入れることに。そして手術は無事に終わりがんは取り除け、幸い転移も確認されず、飯田さんはひとまず安堵の気持ちになりました。

 

しかし手術による体へのダメージがあり、仕事の復帰までには多少療養を要することに。そんなある日の夕方、自宅でTVをみていると「日本初 最先端の治療装置を備える がん治療センター開設」というニュースの見出しが目に入ってきました。

 

よく見てみるとそれは以前保険ショップで担当者が語っていた先進医療の治療法。その治療法でさらに日本初の技術が用いられている治療があるということです。そして早期の肺がんではかなり高い治療効果があるということを登場していた医師が解説していました。

 

どうみても飯田さんの肺がんにもふさわしい治療のように感じましたが、主治医は勧めてくれず結局手術を受けました。この治療は先進医療に該当するため、治療費の自己負担額は約300万円ということ。ただがん保険で先進医療特約に加入していたので、約300万円の治療費はそこから払ってくれたのでは?と飯田さんは思いました。

 

あとから知った必要な情報

もしこの先進医療の治療を受けていれば体にメスを入れることなく治療できたので、いまのようにリハビリをすることなく仕事に復帰できたかもしれない。受ける受けないは別にしても、どうして主治医はまったく説明もなく手術を勧めたのか。

 

そんなやりきれない思いから飯田さんはインターネット検索で情報を見ることに。「先進医療」とキーワードをうったところ検索候補で「受けられない」「受けるには」というキーワードがあがってきました。

 

検索をしていくつかの記事を読んでみましたが、そのうちのひとつに「先進医療は国が指定した病院でなければ、その治療を受けることはできません。厚生労働省のホームページに『先進医療を実施している医療機関の一覧』があるので、そこに載っている病院でセカンドオピニオンをとることが必要です」というものが。

 

飯田さんは『先進医療を実施している医療機関の一覧』を調べてみると自分が治療を受けた病院はそこには載っていませんでした。「あの病院では先進医療を行っていないため勧めてくれなかったのか……」飯田さんは思いました。

 

そして、「主治医から勧めてもらうのではなく、自分で動かなければいけなかったのか…」先進医療特約に加入し、保険でお金の安心だけ持っていても使えないことを痛感した飯田さん。

 

「ただ正直なところそんなことはがん患者さんのほとんどは知らないのではないか? あの保険ショップの担当者は知っていたのだろうか?」そんなことを思いましたが、「まあでもいまさら考えてもやり直しはきかない」飯田さんは考えることをやめました。