誰もが直面する「親の介護」。そんな日が来ることが想像できず、「もし親に介護が必要になったら」の準備ができていない人が多くいます。実際に親の介護に直面したら……頑張りすぎて限界を迎えることも珍しくありません。そうなったら老人ホームに頼るのがひとつの解答ですが、そこには親も子も葛藤があるようです。みていきましょう。
「ありがとう」と言って母は…介護に限界の50代の娘<特養>に入居する母を見送り号泣「なんて親不孝なことを」

「もし介護が必要になったらどうしたい?」と親に希望を聞いていたが…

急に母親の介護をすることになった50代女性。初めは介護休暇など、会社の制度を利用しながら仕事と介護を両立させようと考えましたが、繁忙期には帰りが深夜になることも。そんな状況のなかで親の介護をこなしていくのは大変なことでした。

 

他のきょうだいにも助けを求めましたが、自宅があまりに遠く、現実的に考えて難しい……肉体的に限界を超えてしまい、疲労で入院。「もう自宅で介護は無理かもしれない……」と考えるようになったといいます。

 

そして、1週間ほどで退院したとき、母親から「老人ホームに入りたい」と話があったといいます。

 

――もう、あなたの負担になりたくない

――施設に入ったほうがラク

 

そう母はいうものの、初めは拒否したと女性。なぜなら、母親が倒れる前の正月休み、「もし介護が必要になったらどうしたい」と聞いた際「死ぬまで自宅にいたい」と言ったから。女性としても「自分で親を介護したい」という思いもあったといいます。

 

話は平行線を辿りましたが、最終的に折れたのは女性のほう。現実的に仕事との両立は難しく、このままでは介護離職の可能性も。そうなると経済的にも困窮することが目に見えていました。

 

母親の入居が決まったのは、「特別養護老人ホーム」。いわゆる特養。待機者は多いと聞いていましたが、介護度から優先度が高いと判断され、スムーズに入居することができたといいます。

 

――入居の日、母が「いままで本当にありがとう」って……

 

スタッフに車椅子を押されて自室に向かう母の背中をみて、涙が止まらなかったといいます。

 

――介護が必要になったら施設に入りたい? それとも自宅で介護してもらいたい?

 

きちんと親の希望を聞いておきながら、叶えられなかった自分に後悔しかないという女性。「なんて親不孝なことをしてしまったのか……」と、自問自答する日が続いています。

 

[参考資料]

PGF生命『「おとなの親子」の生活調査2023』

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』