どんな夫婦でも、いつかは別れがあり、必ず1人残されます。そのとき、残された遺族の生活を支えるのが遺族年金。一見、その金額が十分であっても「いまの生活を続けていられない」という事態に陥ることがあります。みていきましょう。
年金夫婦で「月23万円」だったが…65歳夫が急死で<遺族年金>足しても「年金激減」、さらに高齢妻が直面する想定外「これからどう生きていけば」

夫を亡くした高齢妻が直面する「家無しリスク」

――遺族年金があるから大丈夫

 

と、誰もがいえるかといえば、そういうわけにはいかないようです。先ほどのモデル夫婦。貯蓄はなく、賃貸派だったとしましょう。そこで夫が亡くなった場合、何が起きるでしょうか。

 

――やだ、マンションの家賃、これからどうしよう

 

東京在住、夫婦二人で住んでいたマンション。月20万円の年金収入があったときは家賃を払うことができたかもしれません。しかし夫が亡くなった後はどうでしょう。年金収入は7万円減少し、この状態で2人暮らしのマンションに住み続けられるでしょうか。

 

総務省統計局『小売物価統計調査(2024年1月)』によると、東京の民間借家の1ヵ月の家賃は4,492円(1畳あたり)。2人用40平米のマンションの家賃は11.7万円。遺族年金と自身の国民年金、合わせて13万年の妻に払うことは当然できないでしょう。

 

――1人用のマンションにでも引っ越さないと

 

1人用20平米ほどのマンションであれば、5.8万円。月13万円の年金収入でもやっていけそうです。夫を亡くしたのを機に、住まいのサイズダウン……賢明な判断です。しかし、ここで立ちはだかる大問題。

 

――すみません、高齢者の方には貸せないんですよ。

 

株式会社R65が行った『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題に関する実態調査』によると、「年齢を理由に不動産会社に入居を断られた経験はありますか?」の問いに対して、26.8%が「ある」と回答。断られた回数は「1回」が最多ですが、「5回以上」も11.9%。

 

――でも私、お金はあるの。いくら払えばいいの?

 

そんなことを言っても効果はありません。断られた人を年収別にみていくと「年収200万円未満」では27.7%に対し、「年収200万円以上」でも26.4%と同等。収入が高かろうが低かろうが「高齢者は家が借りづらい」というのが現実です。賃貸派の場合、将来「家無しリスク」に直面する可能性を考えておく必要があります

 

長年付き添った夫婦の生活はいつか終わりを迎え、必ず1人で生きていく日がやってきます。そのとき、どのようなリスクに直面するかは、ライフスタイルなどによって異なります。自身にどのようなリスクが内包されているのか知ったうえで、しっかりとプラニングしておく必要があります。

 

[資料]

厚生労働省『令和6年度の年金額改定についてお知らせします』

総務省『家計調査 家計収支編(2023年平均)』

株式会社R65『高齢者向け賃貸に関する実態調査』