日本の公的年金制度。細かな決まりごとが多く、知っていると知らないでは、大きな差となることも珍しくはありません。今回は「年金の繰上げ受給/繰下げ受給」について、実際に制度を利用している人はどれくらいなのか、みていきましょう。
厚生年金、何歳から受け取ればいいですか?厚生年金受給者「2,800万人」の実態

年金を繰り上げるか、それとも繰り下げるか…実際に活用している人はどれくらい?

年金の繰上げのメリットは、なんといっても年金を早く受け取れること。たとえば60歳定年で現役を引退した場合、65歳の年金支給までは収入がゼロになります。その間に収入が得られるというメリットは大きなものです。

 

一方で、年金が減額となるほかに、国民年金の任意加入や追納ができなくなることや、障害状態になっても障害基礎年金が請求できない、寡婦年金の受給資格が発生しても受給できないというデメリットもあります。

 

年金の繰下げのメリットは、なんといっても年金の受取額が増えること。一方で、年金収入が増えることで、社会保険料や税金が増えたり、医療費負担が重くなることも。また加入年金が受け取れない可能性があるなどでメリットもあります。

 

どちらもメリットもあれば、デメリットもあり、「XX歳から年金を受け取るのがベスト」とは言いにくいもの。参考になるのは、諸先輩方がどうしているか。制度の利用者がどれほどいるか、みていきましょう。

 

前述の『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の受給権者2,804万5,102人のうち、年金を繰り上げている人は20万6,757人で、全体の0.7%。一方で、年金を繰下げしている人は37万4,481人で、全体の1.3%。過去4年の推移をみていくと、繰上げ受給は0.3%から0.7%、繰下げ受給は0.7%から1.3%とどちらも増えています。

 

以前は定年後、すぐに年金生活に突入するというのが大多数でしたが、現在はいろいろ。定年を機に完全に引退する人もいれば、再就職して働き続ける人もいます。働き方も現役時代と同じくらいアグレッシブに働く人もいれば、自分のペースで働く人もいます。なかには起業するケースも。セカンドライフが多様化しているためか、年金の受け取り方は少しずつではありますが多様化しているようです。

 

年金をいつから受け取り始めるかの議論は活発にされていますが、結局は答えはありません。自身のライフスタイルに応じて、最適なタイミングを検討することが重要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

日本年金機構『年金の繰上げ・繰下げ受給』