AIが本当に社会を変えるかどうかわからない
実はAIは過去に2回ほどブームが起き、終わっています。第一次AIブームは1950年代後半から1960年代、第二次AIブームは1980年代といわれ、ともに当時の技術では社会の期待に応えることができずに、AI研究はその後一転して冬の時代を迎えています。要するに、「ブームにはなったが、思ったほど使えなかった」ためにブームが終わってしまったのです。
そしてそうであるならば、2000年代から続いているといわれる現在の第三次AIブームも、同じような結末を迎える可能性は十分にあるのではないでしょうか。
現在のAIブームは、インターネットの普及に伴って「ビッグデータ」と呼ばれる大量の情報を収集することが可能になり、それを用いてAIに自ら知識を獲得・習得する能力を持たせることができるようになったことが背景となっています。
現実的に、AIを搭載したロボットが店頭に置かれたり、企業のカスタマーサービスがウェブ上でAIによって対応してくれたり、といったわかりやすい社会の変化もあります。しかし、「それよりはやっぱり人間に対応してもらったほうがよい」と感じる人は少なくないのではないでしょうか。
もちろん、本当にAIが社会を変える可能性もあります。近年特に注目されているコンテンツ生成AIのほか、バイオ創薬やドローン、自動運転車、ロボット、フィンテックなどの分野にもAIは技術的な関連がありますので、どの分野でAIが社会に革命的な変化をもたらすかはわかりません。
しかし、やはり「可能性がある」というだけであり、投資には慎重になったほうがよいでしょう。
これは、「投資をしないほうがよい」というわけではなく、投資をするとしても、三度「ブームにはなったが、思ったほど使えなかった」ということが起きることも考えて、過度なリスクを負わないほうがよい、ということです。
その企業がAIでどれくらい儲かるかどうかわからない
また、本当に社会を変えるようなAIの商用利用が実現したとしても、その企業がAIでどれくらい儲かるかどうかわかりません。技術の進歩とビジネスの成功はまた、別の話なのです。その会社が、AIを利用した製品やサービスで獲得できる市場は、意外に小さいかもしれません。研究開発費など、かかる経費をうまく回収できないかもしれません。そして投資家としても、比較すれば「AI無関係銘柄」に投資をしたほうが儲かった、ということも起こりえます。
メディアの情報には、そのような「ビジネスとしての採算」が報じられることはそうありません。「この製品・サービスが社会をこう変える!」という興味深いニュースはよく流れるかもしれませんが、一体それがいくらの売上になり、その会社の利益がいくら増えるのか、というのはあまり検討されません。また、そんなことはそもそもわからないのかもしれません。しかし株式投資をする人は、そこを気にするべきでしょう。