「老老介護」を実感…心身限界のなか目に飛び込んできた「ニュース」

それから3年が経ち、Aさんは現在65歳、父は90歳、母は87歳になりました。

父はなんとか自分の足で歩けるようにとリハビリに励んでいますが、外出時は必ずAさんかヘルパーが付き添い、車椅子が手放せなくなっています。

また自宅での入浴や着替えなど日常生活にも介護が必要になり、要介護度も「3」に上がり、介護費用の負担も増えました。

現在のAさんと両親の収入と貯蓄は次のとおりです。

出所:筆者が作成
[図表]A家の年金受給額と貯蓄額 出所:筆者が作成
※ Aさんと父は老齢厚生年金、母は老齢基礎年金を受領。
<参考>65歳の厚生年金の平均年金月額は14万3,504円、90歳以上は15万8,753円、87歳の国民年金の平均年金月額は5万6,030円(厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概要より)。

父の介護費用は父の年金からまかない、また3人の生活費は、菜園で収穫する野菜などを活用しながら、なんとか貯蓄を取り崩すことなく生活できています。

しかし、Aさんは65歳。父を自宅で介護するには、体力的にも精神的にも限界が来ています。「これが『老老介護』か……しんどいな」。Aさんは、自宅付近で父が入居できるような介護施設を調べてみました。すると、入居一時金は50万円前後、毎月の費用は15~20万円かかる施設が多いようです。いまより2倍~3倍のお金がかかります。

父を介護施設に入れたいものの、高齢の母も心配であるほか、自分自身の老後資金も残しておきたいAさん。「お金がいくらあっても足りないや。どうしたらいいのだろう……?」

それからAさんは、毎日のようにお金をどうするか考えあぐねていました。そんなある日の朝のことです。テレビで、「高齢者の生活保護受給が増えている」というニュースを目にしました。

生活保護を受ければ、介護が必要になってもお金を気にせず生活できるってこと? これまで真面目に生きてきた自分はこんなに苦労しているのに……羨ましい」。Aさんは思わずひとり言をこぼします。

今後の資金繰りについて誰かに相談したいと思ったAさんは、知り合いである筆者のFP事務所を訪ねることにしました。