厚生労働省によると、65歳以上の生活保護受給者は増加し続けているそうです(2022年6月3日公表:生活保護制度の現状について)。一方、生活は苦しいけれど生活保護を受けていない(または受けられない)高齢者もいます。そこで、生活保護の受給資格や各種保険、その他国・自治体の制度について、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが具体的な事例を通して解説します。
年金月14万円の65歳男性、テレビに向かって思わず「羨ましい」…増える〈高齢者の生活保護受給〉に恨み節【CFPの助言】
「老老介護」を実感…心身限界のなか目に飛び込んできた「ニュース」
それから3年が経ち、Aさんは現在65歳、父は90歳、母は87歳になりました。
父はなんとか自分の足で歩けるようにとリハビリに励んでいますが、外出時は必ずAさんかヘルパーが付き添い、車椅子が手放せなくなっています。
また自宅での入浴や着替えなど日常生活にも介護が必要になり、要介護度も「3」に上がり、介護費用の負担も増えました。
現在のAさんと両親の収入と貯蓄は次のとおりです。
父の介護費用は父の年金からまかない、また3人の生活費は、菜園で収穫する野菜などを活用しながら、なんとか貯蓄を取り崩すことなく生活できています。
しかし、Aさんは65歳。父を自宅で介護するには、体力的にも精神的にも限界が来ています。「これが『老老介護』か……しんどいな」。Aさんは、自宅付近で父が入居できるような介護施設を調べてみました。すると、入居一時金は50万円前後、毎月の費用は15~20万円かかる施設が多いようです。いまより2倍~3倍のお金がかかります。
父を介護施設に入れたいものの、高齢の母も心配であるほか、自分自身の老後資金も残しておきたいAさん。「お金がいくらあっても足りないや。どうしたらいいのだろう……?」
それからAさんは、毎日のようにお金をどうするか考えあぐねていました。そんなある日の朝のことです。テレビで、「高齢者の生活保護受給が増えている」というニュースを目にしました。
「生活保護を受ければ、介護が必要になってもお金を気にせず生活できるってこと? これまで真面目に生きてきた自分はこんなに苦労しているのに……羨ましい」。Aさんは思わずひとり言をこぼします。
今後の資金繰りについて誰かに相談したいと思ったAさんは、知り合いである筆者のFP事務所を訪ねることにしました。