ピーク時年収1,000万円のAさんが、同期を羨んだワケ

Aさんは、1958年11月生まれの65歳です。大学卒業後は、都内に本社を置く通信機器販売業のC社に勤めていました。Aさんは主に営業畑を歩み、まじめで熱心な仕事ぶりが認められ、60歳で営業部長(年収1,000万円)として役職定年を迎え、その後は年収550万円で一般職として後進の指導に当たりました。

65歳のAさんはこのたび退職金1,400万円を受け取り、定年退職したところです。
※ 65歳定年企業は52,418社(22.2%)、中小企業では22.8%、大企業では15.3%(令和4年「高年齢者雇用状況等報告」より)。

いったいなぜ?同期が「64歳11ヵ月」で退職

退職まで1ヵ月となり、後任への引継ぎをはじめ退職の準備を進めていたところ、同期入社のBさんが、定年約1ヵ月前(64歳11ヵ月)で退職した話を耳にしました。

「あいつ……どうせあと1ヵ月で定年なのに、なんでいま辞めるんだ?」とAさんは疑問に思いました。

Aさんと同い年で、9月生まれのBさん。主に技術畑を歩み、昔からマイペースだったこともあり、60歳時点では課長職。その後はAさんと同様、一般職として勤めていました。

C社では毎年、年末に「慰労会」が開かれます。社長をはじめ役員全員が出席し、その年の退職者をねぎらうのです。この年の慰労会でBさんを見つけたAさんは、「なんで定年前に辞めたんだ?」と聞いてみました。するとBさんは、こともなげに次のように返します。

失業保険と年金を両方もらうために、あえて64歳11ヵ月で辞めたんだよ」。

※ 制度上の正式名称は「基本手当」だが、一般的な通称にならい、本記事では「失業保険」とする。

Aさんは、「失業保険?それっていくらもらえるんだよ?」と聞いてみましたが、Bさんは「まあ、そこそこ?」とはぐらかしたまま答えません。

「理由があって辞めていたのか……」Bさんの意外な返答に驚いたAさんは、「自分はもうもらえないのか?」「もらえるとしたらいくらなのか?」と疑問に思い、講演会で話を聞いたFPである筆者のもとへ相談にみえました。