部下から陰で“ケチおじ”と呼ばれようが「倹約家」を貫くAさん

大勢でやる飲み会は絶対に自分が幹事をやって、クレジットカードのわずかなポイントを稼ぐ。プライベートで食事に出かけるときには、1円単位まで割り勘する……部下から陰で“ケチおじ”と呼ばれていた「倹約家」のAさん(60歳)は、昨年勤めていた銀行を定年退職しました。

Aさんの倹約ぶりは、隅々まで徹底していました。勤務先の銀行では、「管理職になったら社宅を出て若手に譲る」という暗黙のルールがあったにもかかわらず、Aさんは55歳の役職定年後、再雇用になっても社宅に居座り続けました。

4歳年下の妻・Bさん(56歳)とひとり娘・Cさん(大学院生)は、これまで何度も「周りの目も気になるし、賃貸でもいいから引っ越したい」と説得してきましたが、「福利厚生だし、節約できていいだろう。社宅住まいのなにが悪い」と断固拒否。この歳まで、社宅暮らしを続けてきました。

そして定年間近となり、いよいよ社宅を出なければならなくなったAさん。Bさんと娘は最後のチャンスだと「この歳からの賃貸契約はハードルが高いと聞くよ」などと必死に説得しました。すると、Aさんは意外にもスムーズにマイホームを探し始めました。BさんとCさんはびっくり仰天です。

※ (公財)日本賃貸住宅管理協会「(平成26年度)家賃債務保証会社の実態調査報告書」によると、賃貸住宅の大家(オーナー)の約6割が高齢者の入居に拒否感があり、60歳以上の単身の高齢者は入居不可……11.9%、高齢者のみの世帯は入居不可……8.9%と、入居を制限している実態がある。また同調査で、入居に関する家賃債務保証会社の審査状況をみると、40~50代では審査落ちはないものの、50代:1.9%、60代:7.5%、70代:9.4%と、年齢が上がるにつれ審査落ちの割合が増える。

しかし、Aさんが頑固に倹約と社宅暮らしを続けてきたのには、ある“理由”がありました。

「定年までは社宅に住める。でも、退職したら嫌でも家を探さなくちゃならない。妻と娘には申し訳ないが、定年まで貯めた金と退職金で、マイホームをプレゼントするんだ」

実は、貯蓄と退職金でマイホームをプレゼントすることが、Aさんの積年の夢だったのです。