厚生労働省によると、65歳以上の生活保護受給者は増加し続けているそうです(2022年6月3日公表:生活保護制度の現状について)。一方、生活は苦しいけれど生活保護を受けていない(または受けられない)高齢者もいます。そこで、生活保護の受給資格や各種保険、その他国・自治体の制度について、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが具体的な事例を通して解説します。
年金月14万円の65歳男性、テレビに向かって思わず「羨ましい」…増える〈高齢者の生活保護受給〉に恨み節【CFPの助言】
自身の定年後、父が要介護に…「万全の準備」を進めたAさん
高校卒業後は地元の工場に就職し、定年まで真面目に働いてきたAさん。給与が高いわけではありませんでしたが、ひとり息子のAさんは実家住まいだったこともあり、家に毎月約10万円入れながらコツコツ貯金。そのかいあって、60歳で定年退職したときには、退職金を含めて預金が2,000万円ほどになっていました。
定年後は、熱中する趣味こそなかったものの、両親が自宅の庭に作った家庭菜園の世話をしたり、両親の病院や買い物の送迎、地元の消防団に顔を出したりと、なにかと忙しい日々を送っています。
そんなある日のことです。3年前、87歳になる父が、自宅の敷居につまずいて転倒。右足の大腿骨頸部を骨折してしまったのです。すぐにD病院に入院し、急性期の手術と治療を受けることになりました。
術後1週間で容態が落ち着いたため、こんどはE病院の回復期リハビリテーション病棟に転院し、リハビリに励みました。
E病院の主治医からは、Aさんに対し次のような申し伝えがありました。
「この病院に入院できる期間は、お父様の場合最大60日です。また、退院後も、継続的にリハビリに通っていただく必要があります」。
また、「認知症が疑われるので、脳神経内科で診察することをおすすめします」と言われたAさんは、父を連れて早速受診。検査の結果、初期の認知症と診断されました。
骨折+認知症で介護が必要になりそうだと思ったAさんは、父の退院後の準備のため、E病院内の「医療ソーシャルワーカー※」や、自治体の「地域包括支援センター」に相談。
※ 医療ソーシャルワーカー……患者や家族の相談に乗り、社会復帰を支援してくれる。
アドバイスをもとに、父が入院中に早速「要介護認定の申請」をし、「要介護度2」との認定を受けました。
認定後は、居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネージャー)が、医師や看護師、リハビリスタッフや父、Aさんや母から現状や要望を聞き、介護保険サービスを受けるための計画書(ケアプラン)を作成。
また、自宅の玄関や廊下、洗面所、浴室などの段差をなくし、車いすで移動できるように、スロープや手すりを付けるなど、自宅のリフォームも実行。父の退院のために万全の対策を施しました。