(※写真はイメージです/PIXTA)

相続には「お墓」や「仏壇」も含まれると思いがちですが、実はこれらは相続財産には含まれません。そのためお墓などを引き継ぐ人は個別に決めなければなりません。本記事では『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)から一部抜粋し、お墓などの引き継ぎ方やするべきことをご紹介します。

支払いや管理が難しくなったら「墓じまい」という選択肢も

先生:先ほど説明したように、お墓って、相続財産じゃないんです。

吉田:それはわかりましたが、私にはどうもピンときません。わが家のお墓の場合、兄弟で跡継ぎを決めましたから。

小春:そうよね。それに、お墓を継いだらお墓の名義変更をするはずよ。だから、私たちの常識では、お墓を引き継ぐのも相続手続きの1つだって思うわ。 

 

承継者はさまざまな手続きを行う…難しければ「墓じまい」も検討

お墓を引き継いだ祭祀財産承継者は、まず、お墓の名義変更の手続きをします。ここで、祭祀財産承継者が相続人であれば、寺院等の管理者に対して相続関係を証明する必要があります。

 

その際、ほかの相続手続きで用いた相続関係書類一式の提出を寺院等の管理者が求めてくることがあります。そのため、祭祀財産承継者は、書類への署名や押印、印鑑証明書の提出など、ほかの相続人たちに協力してもらう必要があります。

 

名義変更にあたっては、墓地の使用規約が問題となります。この規約は、墓地の管理者との約束事だと思えばよいでしょう。

 

使用規約によっては内容が保守的で、承継者が条件を満たさず、お墓を引き継げないケースも想定されます。実の子供や配偶者であれば問題はないですが、たとえば内縁の妻などは、使用規約上、承継ができないことがあり得ます。

 

承継者がいない場合は、お墓が荒れないよう、誰かに管理を頼むとか、あるいは墓を撤去処分(墓じまい)することを考える余地もあるでしょう。

 

ちなみに、お墓の名義変更をしても、その墓地を所有したかどうかはわかりません。地域や施設によって様々ですが、一般的には墓地(使用地)は寺院等の管理者から借りているものであり、名義人が所有者となっているわけではありません。

 

永久に借りて使う権利(「永代使用権」)を持っているということなので、法的にはお墓の持主は期限のない土地使用権(地上権等)を持っていると考えられます。

 

他方で、お墓(遺骨を納めたり墓石を建てた設備)それ自体については、祭祀財産承継者の所有物となります。そのため祭祀財産承継者は、寺院や霊園管理者に対して、年間使用料や管理料等の支払義務を負っているのが一般的で、寺院によっては檀家料ということもあります。

 

 

もし祭祀財産承継者がこの支払いを滞納し、管理者との間の信頼関係が破綻してしまったような場合は、最終的には管理者により墓の強制撤去が行われる可能性があります。

 

そのため、年間使用料や管理料等の支払いが難しくなった場合には、墓じまいを早期に検討することも考えられます。

 

墓じまいをする場合は、遺骨をどうするかを決める必要があります。たとえば、同墓地内の合祀墓などに安置したり、別の場所にお墓を移すこと(「改葬」)が考えられます。

 

改葬の際には、改葬すれば檀家をやめることを意味するため、寺院から離檀料という名目で金銭の支払いを求められることがあるかもしれません。

 

しかし、この支払いについては、法的には応じなくていい、と考えられています。なぜなら、宗旨替えをしたり、特定の宗教を脱退するのは、個々人の信教の自由の問題であり、それが金銭の支払いによって制約されるのは妥当ではないからです。

 

あんみつ先生のチェックポイント

●墓、仏壇、家系図、遺骨などは祭祀財産といい、法的には相続財産とは区別される。

● 祭祀財産承継者を誰にするかについては、遺言書やエンディングノートに書いておくとよいが、指名されたほうも都合があるから、一方的に指名するのではなく、家族会議などで話し合うほうがよい。

● お墓を引き継げば、その名義変更をする必要があり、その際には他の相続手続きと同様に、相続関係の証明書等の書類一式が必要となることがある。

● 祭祀財産の承継者は、寺院や霊園の管理者に対して、年間使用料や管理料等の支払義務を負っており、支払いを怠れば最終的には管理者により墓の強制撤去が行われる可能性もある。

 

 

加藤 光敏(あんみつ先生)

司法書士

 

※本記事は『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

 

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