「年金も課税対象」への怒りの根底にある「高齢者の生活苦」
「これまで、あれやこれやと税金を払ってきたのに……まだ搾取する気か!」と、年金に税金がかかることに対して不満をもつ人は多いようです。
しかしながら、少子高齢化が進む日本。2023年の高齢化率は29.1%に達しました。今後、2025年には30.0%、2040年には35.3%、2060年には38.1%に達すると予測されています。
そして高齢者1人を現役世代の何人で支えるかといえば、現在は現役世代1.9人で1人の高齢者。それが2040年には現役世代1.5人で1人の高齢者を、2060年には現役世代1.4人で1人の高齢者を支えなければいけない時代がやってきます。とても現役世代だけで高齢者の生活を支えることはできない……高齢者にも税金を払ってもらわないと、とても社会が成り立たないのです。
しかしながら、高齢者の生活は厳しい状況。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯1世帯あたりの平均所得は318.3万円。その構成割合をみていくと、「公的年金・恩給」が62.8%、「稼働所得」が25.2%、「仕送り等」が6.0%、「財産所得」が5.4%、「年金以外の社会保障給付金」が0.6%。圧倒的に年金への依存度が高いことが分かります。それにも関わらず、年金受給額は物価上昇率を上回ることなく実質減額。2040年代の年金支給額は現状の2割以上減は既定路線といわれています。また高齢者に生活意識を尋ねたところ、48.3%が「生活が苦しい」と回答し、「生活が大変苦しい」は全体の18.1%と、5世帯に1世帯にも達しています。
冒頭の男性は非課税ラインを上回る年金額を手にしていたことから、税金が天引きされていました。高齢者のなかでは比較的年金をもらっているほうかもしれません。しかしそれで老後も安泰かといえば、そうとはいえない程度の年金額であることは確か。思わず「年金から税金をひくなぁ!」というのも、仕方がないことかもしれません。
[参考資料]