クリニックを開業するテナントの形態は主に2タイプ
クリニックを開業するテナントの形態は、下記の2つのタイプに大別されます。
●一般的なビルに入居して診療を行う「ビルテナント」
●同じ建物内にさまざまな診療科目のクリニックが集結している「医療モール」
ビルテナントでクリニックを開業するメリット
まずは、ビルテナントで開業するメリットを見ていきましょう。
◆初期費用を抑えられる
クリニックをビルテナントで開業する第一のメリットは、初期費用を抑えられる点です。
自己所有の建物を購入する場合、土地や建物の購入費用に加え、必要な改装や設備投資など多くの経費がかかります。しかし、ビルテナントを選択することでこれらのイニシャルコストを大幅に削減できます。
家賃や初期契約金、必要最低限の改装費用のみでスタートできるため、リスクを最小限に抑えながらクリニックを立ち上げることが可能です。
初期費用を節約できれば、その分を医療機器などの設備投資に回すことも考えられます。
◆好条件のエリアが選択肢に入る
条件の良いエリアや立地が選択肢に入るという点も見逃せないメリットです。
都心の駅前や商業エリアなど、多方面からアクセスしやすく人通りが多い場所では、不動産価格が高騰しているケースが一般的です。
テナントとしてビルに入居することによって、こうした好条件のエリアに開業できる可能性が広がります。
患者様の利便性やクリニックの需要に有利な場所を選択することで、集患の機会を最大限に活かすことができるでしょう。
◆建物の維持管理コストが少ない
テナントでの開業には建物の維持管理費が少ないという利点もあります。通常、メンテナンスや修繕、保険などの責任は建物の所有者が負うため、テナントを借り受ける側としてはこれらのランニングコストへの負担は大きくありません。
建物の維持管理にかかる手間と費用を最小限に抑えながら、クリニックの運営に集中することができます。
医療モールでクリニックを開業するメリット
続いて、医療モールでの開業についてですが、医療モールにもいくつかのタイプがあります。
一棟のビルにクリニックが集まっている「医療ビル型」、複合商業施設にさまざまな診療科が入居する「商業施設併設型」、オフィスビルに医療施設が併設されている「オフィス併設型」、マンションの低層階にクリニックや調剤薬局がある「レジデンス併設型」などが主なタイプです。
それぞれ異なる特性がありますが、複数のクリニックが集結していることは共通しています。
ここでは、医療モールで開業するメリットに着目してみましょう。
◆利便性による相乗効果
異なる診療科が一箇所に集結していることは、患者様にとっての利便性という点で集患の相乗効果に期待できます。
例えば、眼科クリニックがあるモールに内科クリニックがあると、眼科の待ち時間に内科を利用することも可能です。
患者様は複数の医師による診察を同じ場所で受けることができるため、遠く離れた場所にあるクリニックを巡る必要がなくなり、移動や待ち時間のストレス軽減につながります。
この利便性は、患者様の健康を継続的に管理する「かかりつけ医」としてのポジションを獲得する効果もあります。
◆共同利用によるコスト削減
医療モールには設備やサービスを共同で利用できる場合があります。
例えば、待合室やキッズスペース、トイレ、清掃スタッフなどを複数のクリニックで共有することで、コスト削減につながります。
また、モール全体の広告宣伝やプロモーションも、クリニック単独で行うよりもはるかに低コストです。
経費を抑えながら知名度を広げることは、開業後のクリニック経営で重要な新患率の向上という点においても見過ごせないメリットでしょう。
◆診診連携が図りやすい
複数の診療科に受診する必要のある患者様に対し、クリニックからクリニックを紹介する診診連携がスムーズなことも利点です。
例えば、糖尿病を患っている方は、合併症である糖尿病網膜症のリスクが高いため、内科と眼科の連携強化が必要です。
そのほか、整形外科と脳神経外科、小児科と耳鼻咽喉科など、症状や疾患に応じてさまざまな連携に対応しやすくなります。
これは患者様にもクリニック側にとっても「医療の質とサービス」という観点でメリットをもたらします。
診診連携を通じて、それぞれのクリニックが提携する基幹病院や大学病院との病診連携もはかどるでしょう。
テナント開業で「後悔しない物件」を選ぶポイント
さまざまなメリットがあるとはいえ、クリニックをテナントで開業する際には、経営目線で「後悔しない物件」を選ぶことが肝要です。
以下に、物件選びのポイントをピックアップします。
◆立地条件のよさ
クリニック経営の安定と成長には「立地条件のよさ」が欠かせません。患者様が利便性を感じ、アクセスしやすい場所が第一の選択肢になるからです。
集客力のある商業施設の近く、繁華街や住宅地の中心部、公共交通機関の近くなど、患者様が通いやすい立地が理想的です。
◆隣接・周辺環境の状況
隣接するテナントの業種や周辺環境の状況をチェックすることも大切です。飲食店なら臭いや騒音の問題が出る可能性もあり、同じビル内にクリニックのイメージに合わない業種が多いと集患に影響します。
また、すでに周辺で開院している競合クリニックの存在を調べることも重要です。
◆物件の条件と設備対応
物件自体の条件を把握することも大事です。クリニックに必要な診察室や検査室、待合室、トイレなどが適切に設置できるかどうかを確認しましょう。
併せて、導入する医療機器の配置スペースや電気容量など、設備面の対応可能範囲も重要なチェックポイントです。
◆賃料や費用の評価
物件の賃料や初期費用も慎重に評価する必要があります。開業時のイニシャルコストは多くないにしても、一定の経費がかかるため、予算内で収まるかどうかを見極めることが重要です。
賃料をはじめ共益費や駐車場代などのランニングコストも、将来の安定経営を意識し、しっかりと目を向けましょう。
◆法的制約と契約内容の確認
地域に密着したクリニックを目指すためには、その地域の法的制約や規制を理解し、それに適合するかどうか確かめる必要があります。
また、契約条件やリース期間、更新条件などを細かくチェックし、将来の変化に対処できる柔軟性を持つことも大切です。
テナント開業のメリットを活かして、理想の診療を実現
クリニックをテナントで開業することは、初期費用を抑えられるだけでなく、好条件のエリアが選択肢に入ります。加えて、建物の維持管理コストが少ないことも利点です。
これらのメリットを十分に活かすことができれば、ご自身が理想とする診療を実現させることは決して不可能ではないでしょう。
そのためにも、物件を選ぶ際には、開業後のクリニック経営を軌道に乗せやすくする視点が大切です。
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