進まないマンションの建て替え
東京都新宿区内に1930年代に建築されたマンションが、60年代になって建物の傾きや雨漏りの問題により建て替えの検討が始まりましたが、住民の合意形成ができずに難航し、やっと建て替え工事が完了したのは実に約40年後の2005年だった、というケースがあります。
高齢者の住民による「自分が生きているあいだは建て替えなくてもいい。壊さないでほしい」との声も多く、住まいへの思い入れも深いのでしょう。マンションの建て替えはそう簡単にはいかないようです。
現行法では建て替えにはハードルが高い内容であるため、マンションの建て替えが進むよう、このたび法制審議会による区分所有法の改正要綱案がまとめられました。これは実に20年ぶりの大改正となります。
どんどん増える老いたマンション
首都圏を中心にマンションの老朽化は大きな問題となっています。
国土交通省の調べでは、2022年末で築40年以上のマンションは約125万7,000戸存在する、とされています。同時点でのマンション総数は約694万3,000戸ですから、全体のうち、約18%が築40年以上の老いたマンションということになります。しかし、これに対し、建て替えの累計実績は2023年3月時点で、わずか2万3,000戸程度にとどまっているのが現実です。
なお、今後も老朽化マンションは増え続け、築40年以上のマンションは、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みとなっています。
マンションとともに老いる住民
続いて、マンションの住民についてみてみましょう。
2022年末時点のマンション総数は約694万3,000戸となっていますが、これに令和2年国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人を乗じると約1,500万人がマンション居住者となり、国民の1割超が居住している推計となる、と国土交通省は発表しています。
高齢者の割合が増え続けている日本ですが、マンション居住者も高齢化が進んでいます。国土交通省が5年ごとに行っているマンション総合調査によると、マンション居住者の世帯主の年齢は60代、70代以上の割合が増加している反面、50代以下の割合は減少しており、居住者の高齢化が進んでいることがわかります。
さらにマンションの完成年次別に居住者を世帯主の年齢をみると、完成年次が古いマンションほど高齢者の割合が高くなっており、昭和54年以前のマンションでは、60歳以上の世帯主の割合は8割近くにも上っています。