マンションならではのランニングコスト
マンションには、戸建てにはないランニングコストがあります。ここでおさらいしておきましょう。
管理費
共用部分で使用した電気料金など水道光熱費や、共用設備の点検、共用部分の清掃、植栽の手入れにかかる費用や管理会社の人件費・管理組合の運営などに使われます。
修繕積立金
外壁補修や共用設備の補修・交換、防水塗装や将来の大規模修繕に備えて蓄えておくための費用です。タワーマンションのような高層マンションでの大規模修繕は足場を組むことができないため、ゴンドラ等で対応することになります。そのため、修繕積立金も割高になってしまうというデメリットもあります。
駐車場代
自家用車を所有している人は駐車場代が必要になります。駐車場も色々なタイプがあり、平面タイプの駐車場であればそれほど高くはなりませんが、立体駐車場だとメンテナンス費用などがかかり高くなってきます。
これらのランニングコストのうち「修繕積立金」については、5年ごとに行われる国土交通省の「マンション総合調査」を見ると、平成22年以降の完成年度別の修繕積立金の額が下がっているのがわかります。
しかし、これには修繕積立金の積み立て方式に大きなからくりがあります。新築分譲当初は不動産会社が売り出しやすいように修繕積立金が低く設定され、その後段階的に値上げされる「段階増額積立方式」を採用するケースが多くなっているのです。
つまり、調査上のデータを見ると修繕積立金の額が一見負担が軽くなっているように見えますが、実態は違うということ。建築等にかかる原材料費や人件費は今後も大きくなっていくことが見込まれるので、マンションに住み続けるのであれば修繕積立金や管理費の負担の増加は覚悟しておかなければなりません。
ランニングコスト以外の売却理由
Aさんはランニングコストの負担増以外にも転居の理由がありました。
「3年ほど前から円安が進んで以降、中国人の住人が急に増えてきたんですよ。最上階の同じフロアにも住んでいます。日本語がわからず資料を読めない人もいて、集会で中国語でわめいたり無断で欠席したりする人もいます。全員がルールを守れない人たちではないこともわかっていますが、うちのマンションは輪番制(持ち回り)で理事を決めるので、もしあの人たちに当たったらどうなるの?と考えてしまいます」
いまはまだ大きな修繕などはないものの、修繕や改修など将来のことを考えるだけでストレスだといいます。
「1億円超の物件なので高すぎる勉強代でしたが、同じところに住み続けるよりもなにかあったらすぐに引っ越せるように次は賃貸にしようか、と夫婦で話し合っています」
売れない中古タワマンの原因
さて、マンションの価格は上がっていますが、すべてのマンションが簡単に売れる、というものではありません。Aさんの住む大阪もマンション価格は右肩上がりですが、Aさん夫婦が住むような1億円を超えるような物件は一般庶民には高嶺の花です。その分買い手も限られてしまいます。
かといって、高額のマンションを買えるような資産家は、中古よりも新築を好む傾向にあります。前述のように新築のほうが修繕積立金も低く設定されていることも影響してきます。買主はマンションを選ぶとき、マンションの価格だけではなく、ランニングコストも含めた毎月の住居費を判断に決定するからです。
今後、住宅ローンの金利が上昇していけば不動産の購入者の減少につながりますし、中国の景気の動向によって中国人資産家の買い手も減ってくる可能性があります。
Aさんの場合は、あと8,500万円ほどローンが残っているため、これ以上の金額で売らないとオーバーローンとなってしまいます。さらにこれだけの物件の場合、売却にかかる仲介手数料も大きく、少なくとも300万円程度はかかるでしょう。
Aさんは頭金で数千万円を入れているため、1億円以上での売却を希望しているようですが、周辺のマンションの新築計画や環境によっては必ずしも希望どおりの時期や金額で売却できるとは限りません。中古マンションの売却は簡単にいかないケースもありますが、専門家を交えて売却計画を進めるようにしてください。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表