身近な人ががんに罹患するなど、がんの恐ろしさを目の当たりにするようなきっかけがあると、自分のがんへの備えが気になり、保険加入を検討する人は少なくないでしょう。しかし、がんに備えるための保険を選ぶ際、ネット上の膨大な情報から正しいものにたどり着くことは、決して簡単なことではないと知っておく必要があります。本記事では、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が、横山ちはるさん(仮名・42歳)の事例とともに、がんに備える保険選びの注意点について解説します。
保険会社「お支払いの対象外です」…年収550万円の42歳おひとりさま、乳がんに手厚い〈女性保険〉に加入も…がん再発で「まさか、給付金を受け取れないなんて!」その理由【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

がんへの「イメージ」と「実情」の相違

現在の抗がん剤治療は「通院」が主流

まず横山さんが抱いていたイメージと、実際のがん治療の実情には違いがあったという点があります。横山さんががん保険を検討した際の思考は、

 

1.乳がんはやはり怖いので、保障が手厚くなる女性保険は安心感がある
2.がんという重い病気の場合治療は長期入院になるイメージ
3.がん以外にも、交通事故など性別を問わないけが・病気での入院費の発生もあり得る

 

といったものでした。このなかの『2.がんという重い病気の場合治療は長期入院になるイメージ』という点ですが、これはかなり昔、昭和の時代のイメージといえるかもしれません。現在のがん治療では、

 

・手術
・放射線治療
・抗がん剤治療

 

が3大治療などといわれていますが、手術以外の2つの治療は通院で行うことも多くなっています。また手術は入院で行うことが多いかと思いますが、その入院日数は以前よりも短くなっています。もちろん例外はあるのですが、『がん治療=長期入院』というイメージはがん治療の実情とはかけ離れていて、そういった思い込みで保険選択をすることは怖いことでもあるのです。

 

抗がん剤治療は、効果が続く限り継続する「長期の通院治療」

そして横山さんが始めた抗がん剤治療ですが、一般的に効果が確認できる限り長く続けていくものといわれていますので、治療の長期化を想定しておく必要があります。つまり『がん治療=長期の通院治療』という図式は知っておかなければなりません。

 

今回横山さんが選んだ保険は『女性保険』と呼ばれるものですが、いいかえると『女性特有の病気に手厚い医療保険』と表現され、保険の種類でいうと『医療保険』に該当します。そしてこの医療保険ですが、特徴をわかりやすくいうと『入院・手術ための保険』なのです。

 

現在のがん治療は、長期の通院治療で治療費が累計で高額になる可能性があるにもかかわらず、『入院・手術ための保険』を選択したことは不適切な選択であった可能性があります。