1人暮らしの親が要介護に……そのとき誰が介護をするのかで揉めることもしばしば。さらに「介護問題」の先の「相続問題」も複雑い絡み合い、家族崩壊……ということも珍しくありません。みていきましょう。
80代母が自宅で転倒→要介護…すべてを60代の妹に押し付ける、お気楽な兄の「あまりのゲスっぷり」 (※写真はイメージです/PIXTA)

仲のいい家族が険悪に…「親の介護問題」から発展する「遺産分割問題」

女性の後日談。ある日を境に「俺も母さんの面倒をみるよ」と手のひら返しをしてきたそう。

 

――いつになるか分からないけど、遺産の配分を気にしているんじゃないですか

 

そのゲスっぷりに、ただ呆れるしかないといいます。

 

親の介護と相続問題は複雑に絡み合うもの。仮に女性の母が亡くなった場合、遺言による指定がない限り、法定相続分として、子どもである女性と兄で2等分します。

 

しかし女性が母の介護を全面的に担えば「特別寄与料」を主張することができるでしょう。「特別な寄与」は、被相続人(亡くなった人)の生前に特別な貢献をした相続人が、遺産分割で決定した分に加えて、貢献の度合いに応じて相続分をプラスできる制度。実際に認められるには高いハードルがあるといわれていますが、相続争いのよくある原因のひとつです。

 

裁判所『令和4年 司法統計』によると、家庭裁判所が取り扱った遺産分割事件は、2022年の1年間で1万2,981件。都道府県別にみると、件数が多いのは「東京都」で1,625件。一方、人口当たり遺産分割事件が多いのは「徳島県」で、人口10万人あたり16.40件でした(関連記事:『都道府県「遺産分割事件」ランキング…〈令和4年 司法統計年報概要版(家事編) 〉 』)。

 

また認容・調停が成立した事件、6,915件のうち、寄与分の定めがあったのは126件。寄与分の遺産価額に占める割合は、「10%以下」が65件、「20%以下」が23件、「30%以下」が11件、「50%以下」が4件、「50%超」が3件でした(「不詳」が20件)。

 

誰もがいつかは直面することになる「親の介護」と、その先にある「相続」。ここでのしこりは、仲の良かった家族がいがみ合うことの原因になります。デリケートな話題だけに、どことなく避けているという人も多いでしょう。しかし思いもよらぬトラブルに発展しないよう、介護や相続が発生する前に、しっかりと家族で話し合っておくことが重要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』

株式会社Speee『親の介護に関するアンケート』

裁判所『令和4年 司法統計 家事編』